タケオ

ヒメアノ〜ルのタケオのレビュー・感想・評価

ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)
4.1
冴えない清掃員 岡田の漠然とした毎日と、サイコキラー 森田が繰り返す連続殺人。あまりにも対極的な元同級生2人の生活は、偶然の再会をキッカケに徐々に交差していく——。

何気ない日常と、その影に潜む残虐な狂気。 虚無的な日常に焦りを覚える人間の滑稽さと、過去のトラウマによりそこで時間が止まってしまった人間の悲哀を、吉田恵輔監督は近年の日本映画とは一線を画す強烈なタッチで描き出した。直接的な表現こそ少ないが、R15+限界を計算して撮影された生々しい暴力描写の数々には、終始圧倒されてしまう。

どのキャストも優れた演技を披露してくれたが、「壮絶ないじめの被害者」という側面を持ち合わせながらも、1ミリたりとも共感や同情を寄せ付けない、そんな最凶のサイコキラー森田を演じきったV6の森田剛の怪演がやはり素晴らしい。全体的に突き放した人間ドラマの描き方が印象的だが、人として達してはいけない領域に達してしまった•••そんな森田の狂気性に強い説得力を与えている。

サイコキラーを生むのが人の業なら、救うもまた人の業。そこに明確な因果関係があるのかは、決して誰にもわからない。

対極のようでいて実はコインの裏表だった2人の男の危険な物語は、最後の最後で森田によぎった「ある記憶」をキッカケに、綺麗事で割り切ることのできない苦々しい結末を迎えることとなる。だが、この「ある記憶」こそ、絶望と狂気に満ちた現代社会を生きる我々に残された、たった1つの'希望'なのではないだろうか?

鑑賞後に仄かな希望と確かな絶望を突きつける本作の力強さは、まだまだ日本映画も捨てたものではないことを再認識させてくれる。