ゼロ

ヒメアノ〜ルのゼロのレビュー・感想・評価

ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)
5.0
めんどくさいから殺していい?

邦画でも衝撃を覚える作品があるのだなと実感した作品です。原作は古谷実先生による漫画です。原作と映画では違いがあるとのことですが、映画は映画で物語が綺麗に完結しています。

物語としては「なにも起こらない日々」に焦りを感じながら、ビル清掃会社のパートタイマーとして働く岡田( 濱田岳さん)。同僚の安藤に、想いを寄せるユカ(佐津川愛美さん)との恋のキューピッド役を頼まれて、ユカが働くカフェに向かうと、そこで高校時代の同級生・森田正一( 森田剛さん)と出会う。ユカから、森田にストーキングされていると知らされた岡田は、高校時代、過酷ないじめを受けていた森田に対して、不穏な気持ちを抱くが・・・。岡田とユカ、そして安藤らの恋や性に悩む平凡な日常。ユカをつけ狙い、次々と殺人を重ねるサイコキラー森田正一の絶望。2つの物語が危険に交錯する。

前半は岡田と安藤(ムロツヨシさん)とユカが織りなすラブコメです。濱田岳さんとムロツヨシさんがコメディを演じているので楽しく観ることができます。不穏な空気を持つ森田が出ていますが、大きく絡んでいません。

タイトルが流れてからの後半。主人公は岡田から森田に変わります。森田を演じる森田剛さんが怖いです。どこにでもいる若者が平気で人を殺し、襲い、生活をしている。サイコキラーなわけですが、そのサイコキラーになる要因も外部的なものであり、学生時代のいじめが原因でした。人は外部的要因でここまで変わってしまうのか…という誰にでも起きる変化が怖いです。

また人を殺す快感と人と突き合う快感。裏表が重なり合う演出に狂気を感じました。

後半になり森田の躍進は続き、岡田と対面するのも良いです。そして森田の行きつく先に待っているのは、人の心でした。森田は殺人鬼ではありましたが、人間であることに変わりありません。寧ろ、私たちとは違う人間と描写しないことに気持ち悪さを感じます。

前半と後半のギャップ、森田剛さんの演技らしくない狂気、サイコキラーのまま終わらせない結末。興味がある人は観ても損はない作品でした。
ゼロ

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