幕のリア

グランド・ジョーの幕のリアのレビュー・感想・評価

グランド・ジョー(2013年製作の映画)
4.2
「スノーデン」では端役として異常なオーラを放っていたニコラス・ケイジ。
端役での出演は珍しく、最近はもっぱら今作のような小品の主演が続く。
かつては一作のギャラが1000万ドルを超えると言われていたが、今でもその水準にあるとは思えない。
仮に数百万ドルレベルとしても、彼の浪費癖と生活レベルをキープするには、どんな作品であれ主演を続けねばならず、かつての東映スターのように主演の役者次第では一定の興収が見込めるのかもしれない。
また、低予算であっても世界観の準備が出来ていれば、ニコラスケイジ一人で作品のステージが際限なく上がる可能性を秘めている。

今作にドラマなど無い。
何も無い街に、何も出来ない人間がそこここに居て、何の目的も持とうともせずに日々を積み重ねている。
過剰な演出は無くても、感情が揺さぶられる不可思議な映像体験。
クリントイーストウッド作品に通じる、これぞアメリカというようなアルコール度数の高い、喉が焼けるような感覚にとらわれる。
登場人物は、傷を負い、傷を負わせ、目的無き目的を果たして生きている。
森に群生している役にも立たない古木に毒をまぶして伐採し、新たに松林を植えるための土地を確保するのがジョーの仕事という皮肉。
僅かな友情の芽生えが親愛を生むのだが…

人生の澱のリアルに目が離せない良作。

FORGERではトラボルタとの共演が印象的だった青年タイ・シェルダンに注目。
松林に向かうエンディングが美しく救われる。
幕のリア

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