リッキー

グランド・ジョーのリッキーのレビュー・感想・評価

グランド・ジョー(2013年製作の映画)
3.7
879本目。
しばらくニコラス・ケイジの映画は敬遠していましたが,久しぶりに彼が好演した作品と知り、鑑賞しました。

この映画は彼の代表作「リービング・ラスベガス」に似た味付けのような感じがしました。「リービング~」は、好きな酒を飲みまくって死んでいこうとする、仕事や家族も失ったアルコール依存症の話でしたが、本作品でも酩酊状態の演技はリアリティがあり、説得力があるため、アカデミー主演男優賞を獲得したあのころの、シリアスな演技を思い出させる映画となりました。

舞台はアメリカ南部で、森林に恵まれた自然豊かな土地が広がっています。
その中で主人公のジョーは前科がある肉体労働者としてまじめに働いていますが、北部と比べ南部には経済的な格差社会があるため、低賃金で働く彼等労働者達は、酒場や売春宿で日々のストレスを発散しています。将来の展望がないその日暮らしに近い生活のような印象です。

ジョーが監督して行う木の伐採は独特な方法で,木に切り込みを入れ,毒薬を流し込み腐らせる方法です。日本では用いない方法で、もちろん違法行為のようですが、コスト削減のためにこの方法をしなくては立ち行かない状況もアメリカ南部の現実なのではないでしょうか。

ある日、少年が仕事を求めてジョーに近づきます。真面目な少年を信用して採用しますが,ろくでなしの父、虚弱な母、突然緘黙症になった妹の面倒をみている少年の生活状況を知ることとなります。ジョーは少年に同情し、自然に父親のような目線で接していくようになり物語は進みます。

この映画ではこのような歴史的に厳しい格差問題について把握していないと、感情移入が難しいような作りになっています。何故ジョーが何度も故意に警察に逮捕されるのか、自暴自棄になるのかなど、社会への不満がそのような行動につながるように思えます。

格差社会はアメリカに限ったことではなく、もちろん日本を含めた先進国では深刻な問題となっています。小手先の政策では意味がありません。マクロ分析により様々な政策を模索中でしょうが、「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る」と多くの啄木を生み出さないような世界になるよう切に願います。
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