Inagaquilala

シンクロナイズドモンスターのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

3.9
これはもう奇想というしかない。なにしろ韓国のソウルに現れた巨大怪獣が、アメリカの田舎町に住む主人公とシンクロしてしまうのだから。ニューヨークでライターとして働いていたグロリア(アン・ハサウェイ)は仕事を失い、自暴自棄になり毎晩のように酒を飲んでは酔っ払っていた。同棲していた恋人からも愛想をつかされ、グロリアは負け犬となって故郷の田舎町に帰ってくる。

グロリアは酒場で働き始めるが、テレビでは韓国のソウルに巨大怪獣が出現したことが報じられていた。ある時、グロリアは怪獣の動きが、自分が近所の公園でとった仕草とそっくりなことを知る。つまりこの田舎町の公園にいる自分と、ソウルに出現した巨大怪獣は動きがシンクロしているのだ。彼女が腕を上げれば、怪獣も腕を上げる。歩けば歩き出す。面白半分で動きをつけていたグロリアだが、それがソウルの人々にたいへんな被害をもたらしていることに気づくのだった。

何故、巨大怪獣と主人公の女性の動きがシンクロするかは、劇中ではいっさい明らかにされないが、そのようなバックボーンより、巨大怪獣とシンクロすることで彼女の生活に決定的な変化が訪れ、そちらのほうの奇妙なドラマのほうがなかなか興味深い。怪獣とのシンクロに彼女の恋愛模様も絡み、中盤からは巨大怪獣に対抗するかのように、巨大ロボットも現れ、前代未聞のダイナミックな痴話喧嘩も始まる。

「プラダを着た悪魔」や「レ・ミゼラブル」のアン・ハサウェイが巨大怪獣使いの役柄を演じること自体が驚きなのだが、彼女自身も製作総指揮としてスタッフに名を連ねており、この原作にかなり入れ込んでいることがわかる。監督及び脚本はスペイン出身のナチョ・ビガロンドで、彼は「エンド・オブ・ザ・ワールド 地球最後の日、恋に落ちる」や「ブラック・ハッカー」なぜでメガホンをとっている。

最後になるほどという結末も用意されているが、怪獣映画に恋愛ものが絡んだ、近来観たことがないミクスチュア作品だ。怪獣の造形にややB級感が漂ってはいるが、とにかく細かいことにはあまりこだわらないで、このナチョ・ビガロンド監督が展開する奇想の世界に遊ぶことが楽しむ秘訣かもしれない。
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