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シンクロナイズドモンスターのRのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

自宅で友人1人と。

2017年のモンスター映画。

監督は「タイム クライシス」のナチョ・ビガロンド。

あらすじ

恋人のティム(ダン・スティーヴンス「結婚まで1%」)に愛想を尽かされ、田舎に帰ってきたアルコール依存で休職中のライター、グロリア(アン・ハサウェイ「オーシャンズ8」)。そこで子ども時代の同級生オスカー(ジェイソン・サダイキス「ネクスト ロボ」)と再会、彼が経営するバーでアルバイトとして働くことになるグロリア。ある晩、彼の仲間と夜な夜なバーで飲みふけった帰り、意識が朦朧としたまま、気がつくと近隣の公園のベンチで朝を迎えていた。時を同じくして、韓国、ソウルで突如怪獣が現れ、街を襲う事件が発生するが、ある時グロリアは自分が公園でうろついた際の行動が怪獣と連動していることに気付く。

ゲオ準新作半額にて。

確か原題「コロッサル=巨大」の頃にその内容を読んで、これはめちゃくちゃ面白そう!!とアンテナが反応して、ずっと公開を待っていたわけだけど、また例のごとく近隣ではやっていなかったので、此度レンタルで鑑賞。

結論から言えば、少なくとも今年観た映画の中でベスト5に入るくらい楽しめた。これは面白い!!

まず、やっぱり主演を務めたアン・ハサウェイが良かった。この方は顔立ちといい割と上品なイメージが強いんだけど、今作ではそのイメージを脱却して、今までにないダメダメ女子を演じてる。けど、そのなんとも言えない「隙感」がイイ!!基本的にノタノタしてて隙だらけなんだけど、やっぱりアップになると顔立ちが上品なので、そのギャップのナチュラルな緩急にヤラレル!!頭を掻く仕草や彼女らしからぬファニーな言動も実に可愛い!!これは周りの男もほっとかないわ!!

また、グロリアが怪獣の動きと連動するわけなんだけど、頭を無意識に掻いてしまう癖とか「街破壊してすみません」と韓国語で書いちゃうのとか、怪獣の姿そのままでやるので、視覚的にはすごくシュールなんだけど、すげぇ面白かった。

ただ、それとは別に今作なんと言っても特筆すべきは、ハサウェイ演じるグロリアの同級生オスカーを演じたジェイソン・サダイキス!!洋画コメディをよく観ている人なら「モンスター上司」や「なんちゃって家族」に出ているコメディアン俳優のイメージが強いと思うんだけど、今作ではハサウェイに続いて、そのイメージを脱却、というかかなぐり捨てて、強烈なキャラクター性を確立している。

再会した当初はグロリアの身の上を聞き、仕事を口利きしたり、使っていない引くほどでかいテレビや家具一式をくれたり(それもそれで怖いが)と親切にしてくれるんだけど、グロリアが飲み仲間のジョエル(オースティン・ストウェル「ホース・ソルジャー」)とネンゴロになったり、元彼のティムとバーに出向いた際に、おそるべき本性を露わにする。

他の作品のDV男キャラみたいにいきなり凶暴になるわけじゃなく、徐々にギアを上げてくるというか、空気を次第にピリつかせながら、無表情で声音は一定、しかし言ってることはマンパワー剥き出しのパワハラ男がこんにちは!って感じで狂気を纏い始めたらさぁ大変!!アルコールでの度重なる失敗を悔いて酒断ちしているグロリアに必要以上に酒を強要したり、自らのバーで物置からどデカイ打ち上げ花火を持ってきてぶっ放したりとヤベェを通り越して最早サイコです!!

しかも、こいつグロリアの怪獣と同じく、意識を同期したロボット(フォルムは正義のロボット)となってソウルの街に現れるんだけど、前述の通り、その本性悪しき心を持ち合わせているので、さぁ大変!!グロリアにパワハラまがいの交渉を持ちかけ、それが上手くいかないとグロリアの目の前でのっしのっしと砂場を歩く(視覚的には滑稽だけど、実際は香港の街を踏み潰している)。

宇多丸さんが評論で「男の嫉妬はタチが悪い」なんて言ってたけど、それをここまで体現してくれるとは思っても見なかったなぁ。いやぁ、怖かった。

けど、1から10まで人間として理解できない…わけじゃないんだよなぁ、オスカーのグロリアに対する感情は決して恋慕だけでなく、田舎に戻ってきてまで自身に劣等感を抱かせるグロリアが許せなかったんだろう。

話的にはプーの女主人公が怪獣と瞬間心重ねて、シンクロしちゃうっていう、どんな思考回路をいじったら思いつくんだっていうエキセントリックな話しながら、決して「パシフィック・リム」のような胸熱怪獣大決戦ものではなく、蓋を開けてみると小さなコミュニティの中でくすぶり続けた男の業が渦巻く意外性のある作品でした。

まぁ、そういう意味では本当のモンスターは香港の街に現れた怪獣ではなく、オスカー自身だったのかもしれない。
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