滝和也

サウスポーの滝和也のレビュー・感想・評価

サウスポー(2015年製作の映画)
3.8
人生ほど重い
パンチはない!
嘗てロッキーが語った
様に…。

栄光、挫折、転落
そして復活。
ボクシング映画の王道
を行く父と娘の物語。

「サウスポー」

ジェイク・ギレンホールが徹底した肉体改造を行い、挑んだ秀作。それは冒頭書いたロッキー・ザ・ファイナルの台詞の如く苛烈なる運命を描いた作品でした。

無敗の統一ライトヘビー級チャンピオン、ビリー・ホープは新たな挑戦者の挑発を受け、衆人環視の中乱闘を演じた。その時、誰かの銃が暴発。最愛の妻が亡くなってしまう。自暴自棄となった彼は試合にも破れ、転落の一途を辿る。自殺を図るまでになった彼は、可愛い娘とも司法の手で引き裂かれた。娘との生活を取り戻すため、彼は再起を図る…。

ボクシングを描いた作品でも王道を行くストーリーです。スラム、養護施設出身と言うあしたのジョー並みの主人公が栄光から転落、2時間の中でこれでもかと人生と言うパンチをくらい、叩きのめされる…。唐突に娘さんに言われるあの一言に思わず涙…。

主人公を演じるは名優ジェイク・ギレンホール。凄まじい肉体改造とボクシングトレーニングで見事な演技を見せてくれる。しかも、よりリアリティを出すため、変化するボクシングスタイルをきっちり見せます。はじめの一歩を読んだことのある方ならバッチリわかります(^^)

猪突猛進型の打たれても打ち返す観衆受けするスタイルのチャンプ時代。そこから新たなトレーナーを得て、ガードを学ぶ。ピークアブースタイルのガードで頭を降る一歩的スタイルからショルダーブロックをメインとした半身になるデトロイトスタイル。ヒットマンスタイルとも言うスタイルに変化。フリッカー的なジャブも打ちます。更にラストに来るのは一歩も苦しめられたスイッチ。これは距離感が掴めなくなるんですよね…。と試合に関しての理詰めな所はかなり良いですね(^^)

それを教える片目が義眼のトレーナー、ティックにフォレスト・ウィティカー。正にあしたのジョーなら丹下団平(笑) 人生の再起をかけた男を公私に支えるスラムのジムトレーナー。この方が演じるとやはり上手い。さり気ないシーンにも哀愁が出てますね(^^)

早々に退場してしまいますが、奥様にレイチェル・マクアダムス。美しくしっかりモノの幼馴染で、死なれたら確かに自暴自棄になるのがわかる…。可愛い娘さん役が何となく彼女に似ていて、後半で父を支えようとする辺りに彼女の影が見えて、健気で…。

王道過ぎる作品を作り上げたのはアントワン・フークア。イコライザーやエンドオブホワイトハウス等のエンタメと同じく手堅いがこだわりのある職人ぶりを見せてますね。

ただ…冒頭に書いたようにボクシング映画で王道は先駆者が偉大過ぎる。既に語られ尽くしているとも言えるんです。ロッキーと言うシリーズがある故に。上記で書いた試合への拘り、父と娘の人生への再起という部分はロッキーにはあまり無い所なので印象に残りますが、どうしても栄光、挫折、再起となるとエモ過ぎる展開のロッキー3が出てきてしまう。あれはシリーズの強みをフルにエピソードで使いますからね。しかもこちらの制作年でクリードとしてロッキーシリーズが復活すると言う不運もある訳で…。

とは言え、ストーリーは楽しめますし、ジェイクの凄まじい演技やまるで日本のボクシング漫画ファンが楽しめるオマージュの様なポイントが多く、私には楽しめました(^^) ロッキー見た方も見てない方もこちらも是非(^^)

追記…やっぱりマネージャー兼プロモーターはやな奴…ドンキング以来このパターンも王道(笑)
滝和也

滝和也