こたつむり

64 ロクヨン 後編のこたつむりのレビュー・感想・評価

64 ロクヨン 後編(2016年製作の映画)
3.8
♪ 譲れなかった想いは 何処に置いたっけ
  失くしたくなかったものは
  どんなものだっけ

前後編の“後編”は期待しないのが鉄則。
特に観客の想いを煽るような予告編は観ない方が吉。そんな姿勢で臨みましたが…いやぁ。最後の最後まで勢いを失わない作品でした。うーん。マンダム。

ただ、正直なところ、終盤の展開は暴走してると感じましたけどね。原作とは違う着地点を目指したから…なのは分かりますが、やはり脂っこいのは受け付けない年齢なので…。うー。

だからと言って評価を下げるのは勿体無い話。
それに、なんとも挑戦的な姿勢じゃないですか。大人向けのドラマなのに、目茶目茶に前のめり。瀬々敬久監督の覚悟が伝わってきましたよ。

ただ、それは諸刃の剣でもあります。
勢いがあり過ぎるゆえに観客を置いていってしまう可能性があるのです。僕は原作を読んでいたので補完できましたが、一般人には馴染みの薄い警察内部を本作だけで理解するのは難しいと思います。

少なくとも、警視庁と県警の関係性。
それと警務部と刑事部の微妙なバランス。
この辺りは最初に抑えておいた方が良いです(それでも二渡調査官の存在意義には首を捻りたくなりますが…他の作品だと主人公だったりするんですけどねえ)。

また、オリジナルの部分を入れてしまったことで《犯人》の心理描写が中途半端になってしまったのも残念。この辺りも難しいところですね。原作と同じ展開だと物足りない気もしますし。

そもそも重厚な原作を前後編4時間で収めている時点でスゴイんです。創作は“加える”よりも“削る”ほうが難しいわけで。本作を仕上げるために、ある一定のラインで割り切った“覚悟”は称賛すべきだと思いました。

まあ、そんなわけで。
横山秀夫先生の傑作を見事な手腕で映像化した傑作。瀬々敬久監督の筆致がとても良かったので、他の作品もチェックしたくなりました(と言ってもピンク映画の方ではないですよ…)。
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