父母ともに癌

仁義なき戦い 頂上作戦の父母ともに癌のレビュー・感想・評価

仁義なき戦い 頂上作戦(1974年製作の映画)
4.3
広島のやくざ抗争が神戸の巨大組織二つの代理戦争の趣を増し、敵味方の色分け、戦争回避工作、若手の暴走など混沌たる状況についに警察が立ち上がって状況を無理矢理収束させてくる話。

相変わらず面白い。
ストーリーというか全編かけて描かれるパワーバランスの変化はやはり複雑だと言っていいと思う。複雑なんだけれど、誰が裏切りそうで、誰が仁義があって、誰が日和見で、誰が暴発するのか。このあたりはキャラクター的に一目瞭然なのでその俳優の演技がいったい何を示しているのか、はわかりやすいし、楽しい。
じょじょに情勢が変化していくのでは無くって急に情勢が変わるのがちょっと惜しいかな、とも思う。

役者の演技は充実している。この映画の岩尾正隆の顔芸は心に残るものがある。
小林旭がシリーズ中で一番活躍していると思う。「芸者、料理屋、酒」と金子信雄が回してきた領収証に悪態をつくシーンは最高。物まねしたくなる。
菅原文太が警察に連行される場面の文太の肩の動きのかっこよさも自分は逮捕もされていないのに歩いているとまねをしたくなる。
屋台のラーメン屋で小林稔侍がラーメン鉢をたたきつけて怒るシーンもまねしたくなるが、これはラーメン屋のおやじに怒られるからやらない。

複雑な筋立ても、男たちにいろんな顔をさせ、いろんな死を演じさせる為のものなのだ。筋をはっきり理解する必要の無い映画だし、それができなくても楽しめる映画になっていて、それが非常に素晴らしい。
男たちの命をかけた戦いに末、最終的に、別方向ではあるが仁義を通しあって騙しあい、はったりをかまし合った二人が刑務所のイスで並んでふるえるシーン。あそこの無情な空気感とやるせなさは自然と感じることができる。

やっぱりとってもいい映画です。
父母ともに癌

父母ともに癌