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ファニー・ガールのだんのレビュー・感想・評価

ファニー・ガール(1968年製作の映画)
4.4
バーブラ・ストライサンドをスターダムに押し上げた名作ミュージカル映画。
バーブラの歌唱力が光るミュージカルシーンももちろん楽しいが、期待していなかったストーリー面でも意外に心を動かされた。

前半は、田舎町の「美人ではない女の子」が夢を叶え、白馬の王子様を捕まえるシンデレラストーリー。しかし後半は王子様でいられなくなった男と、対照的にどんどん有名になっていく女との夫婦ドラマだった。なんともビックリな構成。

これまではファニーに憧れられていたニックが、いつからかファニーに養われる側になっていた。彼のプライドの強さと理想の男性像への必死な思いは無様でありながらとても悲しげでもあった。

一連の流れは「スタア誕生」の作品群とかなり似ているが、「ファニー・ガール」にはそれらのプロットよりも現実味があり、感情移入しやすい。
やはりそれは、主演のバーブラ・ストライサンドのおかげだと思う。

前半の初々しくかわいいファニーは、美人なタイプではないものの目を引くほど光っている。バーブラの舞台的な演技はとっても愉快でこの映画にコメディというジャンルを付け足しているような気がした。現代でも大笑いできるほどに面白い。

それに比べて後半のスターとなったファニーは、前半の若々しさや元気はどこかに行って、表情に大物感が出てる。見ればわかるんだけど、前半のファニーと後半のファニーは、本当に歳をとったかのように趣が違う。さすが。

お互いの幸せのために二人が別れを選ぶ恋愛映画はたくさんあるけど、この映画ではニックのプライドのために愛し合う二人が共に別れを選んでいた。滑稽にも思えるけど、男と女の立場が明確であった時代だからこそできるストーリーであり、確かに愛の物語だった。

ラストにバーブラにが歌う「My Man」は泣くほど見事。ミュージカル映画は音源に合わせて口パクして映像を作るけど、このシーンでは録音も撮影も同時に行っている。ミュージカル出身であるバーブラだからこそできる発案で、とても感情的なシーンで好き。

美術面も大好きな60年代のオシャレミュージカル映画。オススメ。
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