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父を探してのTSのレビュー・感想・評価

父を探して(2013年製作の映画)
3.7
【ブラジル製の社会派アニメ】78点
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監督:アレ・アブレル
製作国:ブラジル
ジャンル:アニメ
収録時間:80分
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アカデミー賞にもノミネートされたブラジル製アニメ。心が温かくなるソフトなタッチで描かれていますが、実はブラジルの現状を鋭く描いた社会派映画とも言えます。出稼ぎにいった父を探すために、少年はブラジル中を回ります。そこで出会う人たち、目の当たりにする風景、そして最後の衝撃も含めて中々の良作と思われます。

アニメに限らずたいていの映画には後ろの背景があるのは当たり前ですが、今作にはそれがほとんどありません。かなり白が強調されているのが興味深いです。何か意味があるのかもしれませんが、この設定にすることにより、登場人物が際立っているように見えます。
幾何学的な文様から始まり、彼とその家族のストーリーが始まります。人物のタッチはかなり特徴的で、昔の童話の絵本のような仕上がりです。最初こそやや違和感があるものの、徐々に慣れてくると思われます。

父を探すために都会に足を運びますが、そこにはロボットの如く毎日出勤しては黙々と仕事をする人達、そして本格的な機械化によるリストラなどの現実があり、それを目の当たりにした少年は唖然とさせられます。いわゆる行きすぎた資本主義を痛烈に批判していて、これにより本当の幸せが生まれるのか?という重要な問いを示しています。恐らく中盤に出てくるあの街もリオのファベーラでしょう。実写映画であれば、『インクレディブル ハルク』の冒頭部分の逃走劇のロケ地としても登場しました。

まあでも、ここまではよくありがちな設定であり、特徴的なタッチを除いたらやや平凡かなと感じました。しかし、最後の事実でやや唖然とさせられてしまいます。ただ現実を映すという教訓染みた作品ではなかった。このあたりがアニメで表現したる理由であるとも言えましょう。どこかファンタジックなのに内容は骨太。この調和が良かった作品だと思います。

台詞はほとんどありません。しかし、台詞などなくても絵で全てが伝わる作品です。思えば今作の製作は2013年。ブラジルにとっては今作は、ワールドカップやオリンピックに備えて自国の在り方を再考する題材にもなったのではないでしょうか。果たしてブラジルは少なからず変わったのでしょうか。
80分にも満たない作品なので気軽に見れるでしょう。気になる方は是非。
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