ちろる

父を探してのちろるのレビュー・感想・評価

父を探して(2013年製作の映画)
4.3
ずっと観たくて見てなかったけど、ブラジルにもこんな素晴らしい名作アニメがあったんだなーと嬉しい気持ちです。
クレヨンと、色鉛筆と水彩画を合わせたような柔らかいタッチのアニメーション。
でも、描かれている内容は割とダークで重かった。
淡々としているようで、しっかりとあっと驚く展開へと突入していくプロットの秀逸さもやられました。

搾取するものと搾取され続けるものの構図が永遠に変わらない。
その搾取の犠牲となる子どもの視点から描いた孤独で切ない冒険物語
少年の妄想の世界と現実の世界を台詞のない映像で見せていくという、複雑な構造ではあるけれど、見せ方は非常に上手いので難解ではないけれど、
ただ上げてはまた下げてという混沌とした演出の中で南米の闇を描写しているので、娯楽性はなく、多分中学生以上のアニメーションなのかも。

私たちがこの国で享受している衣食住の贅沢の後ろ側で、ふつうに家族と暮らすこともできない労働者たちの犠牲があるという事実を見せつけられてしまってドキッとなってしまう。

世界の縮図、独裁政治問題、戦争の脅威、環境問題などを取り入れてはいるものの、
直接的な表現や、強いメッセージを入れ込まず感覚に入り込むような控えめさも好感度があるので他のどのアニメーションとも被らない唯一無二の魅力がある作品でもありました。
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