スギノイチ

めくら狼のスギノイチのレビュー・感想・評価

めくら狼(1963年製作の映画)
3.0
いくら東映とはいえ、さすがに少し変えて来るに違いない…
という予想は外れ、思った以上に遠慮なくパクっている。
ぼさぼさ坊主、汚い着流し、三味線、“めくら”と言われ激昂する居合の達人、しかも仕込み刀…かろうじて逆手斬りではない。
座頭市との違いを探す方が難しいのだが、しいて言えば関西弁なことと、市よりは陽性の性格をしている。

主人公のキャラクターこそまんまだが、時代設定は明治なので、江戸時代末期を舞台とする座頭市とは一応の差別化が図られている。
それに、座頭市は時代劇と任侠モノの2つの性格を持っていたが、『めくら狼』は任侠の趣が強い。
そのためか殺陣シーンも少なく、『座頭市』のようにアクションで魅せることもない。
ヒロインは藤純子だし、完全にいつもの東映任侠をやっている感じ。

脚本は笠原和夫で、主人公の想い人が寝取られていたり、人生の師匠とも反目する羽目になったりと、結構暗い話が続く。
それでもあまり陰惨にならないのは、主人公・捨五郎のバイタリティが大きい。
気分のままにすぐに踊ったり走ったり、座頭市に比べるとかなり喜怒哀楽が豊かだ。
小さな男の子との一連のシーンからは、ちょっと無法松的な要素も感じる。
まあ、快男児的キャラクターを寄せ集めただけといえなくもないが…
結局これ一本しか作られなかったようだが、もう少しシリーズが続けば、座頭市とは違った何かが見えてきたかも。
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