アズマロルヴァケル

雨にゆれる女のアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

雨にゆれる女(2015年製作の映画)
3.4
良作なのにあと一歩だった映画

・あらすじ
ある人物を殺し、逃走した男。

4年後、工場で働き、人付き合いを避けてボロ家でひっそりと暮らし、「飯田健次」という名で生活していた。ある日、お調子者の同僚下田によって理美という女性を預かってほしいと頼まれてしまう。最初は断ろうとした男だったが、仕方なく理美を預かるがことにした。

暫くして下田は理美をもう一日預かってほしいと頼まれてしまい、男はもう少しだけ理美を預かるが、下田は強盗未遂で捕まってしまい、理美は下田のところに帰れなくなった末に再び男の家に戻るのであった。

こうして、男と理美の関係性は日に日に深まるようになり、肉体関係を結ぶほどの深い関係になっていくのだったが、次第にに男の正体が理美によって明らかになっていき……

・感想

映画全体は重厚で暗い雰囲気の映画。分かりやすく言うと、東海テレビ系列の昼ドラでやっててもおかしくなさそうなシリアスな映画。

青木崇高と大野いとが織り成す演技とカメラワークから成る映像美で映画としてかなり完成度が高く、とても見応えは抜群で、これこそ映画と云える内容。

まず、青木崇高と大野いとの演技に関しては半野監督のキャスティングが良かったのか…なかなか味わいはあった。青木崇高さんは主人公の見事に危なっかしくて人を寄せ付けない前科者の役柄を見事に体現していて、青木崇高さんだけでも
全編通して釘付けになれます。

一方、大野いとさんの演技はちょっと賛否が分かれそうかも。実に悲しげで暗いヒロインを演じているのだが、良く言えばブレない昭和美人を演じていて、悪い捉え方として言えば、情が籠った演技である一方で妙に誇張したかのような演技といった感じ。

また、カメラワークもまるで計算されたかのように良く出来ていた。例えば、後半で男と理美が互いの素性に関してのやり取りをしているシーンで青木崇高の横顔を敢えて涙を流していない右側だけを長めに映してるのですが、このシーンが見事に秀逸でキレイに押さえてて素晴らしい。あと、ラストシーンで男と理美が海辺にいるシーンもこれまた不穏で暗い雰囲気さながら美しく、何度見ても飽きないです。

しかしずっと観賞してはいたのですが、どうも録音機器が充分ではないのか、それとも編集作業やミックス作業で踏み間違えたのか、ラストシーンで理美が肝心な台詞を言うものの、その台詞が聞こえづらく、「あれ、これって一度スタッフに指摘されてなかったの?」と言いたくなりました。あと、よくよく考えたら下田は男のところに理美を預けるものの、
後に男が理美を監禁してると思い込んで警察だと称して訪ねて来たりするので「えっ?」と思ったりはする。でもこういう無責任かつクズそうな人間って案外世の中にいそう。おまけにヘタレやクズ役に定評のある岡山天音が演じているので妙にくどい。

物語としては、結構ベタなサスペンスもので、人を殺してしまった男のもとに男の関係者であるある女性が転がり込んでいき、次第に恋愛関係に発展していくといった感じで、決して内容自体は全編一捻りはなく、特に目新しくないものの、役者の演技や演出によって良作には仕上がってはいる。けどかなり映画らしいもののシリアスで考察のいるベタな内容、かつ好みが分かれそうなストーリーなので他人を選ぶ映画だと思う。