モジュラーおよびシンセサイザーの歴史的/文化的な証言をさまざまなミュージシャンや関係者に細かくおこなっており、音楽ドキュメンタリーとしての質が非常に高く、その点だけをとっても見るに値する作品だと思います。
学術的で実用的な側面の強いMoogを筆頭にした東海岸、サイケデリックでカウンターカルチャー/ヒッピーカルチャーの一部だったブックラをはじめとする西海岸で、思想やアティチュードが違うことを歴史をたどりながら丁寧に説明していて、とても興味深かった。
プリセットを筆頭に、シンセサイザーが効率性や実用性に傾いて「文化」としての本質(トレント・レズナーの言葉を引用すると「魔法」)を見失う過程も描かれていて、しかもそれにRolandやKORG、YAMAHA(特にDX-7)といった日本のメーカーが深く関わっているという証言もあったりと、なかなか痺れる内容だった。80年代的な高度消費主義をベースにした価値観が、現代から見ていかに表層的であったか(それゆえに魅力的な側面もあるのだろうけれど…)、遠回しに考えさせられたということから、資料的価値もとても高いように感じられた。