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人間の値打ちのとぽとぽのレビュー・感想・評価

人間の値打ち(2013年製作の映画)
3.7
いつだってお金の問題

一つの事故から(遡って)始まる群像劇
"人的資本"
自転車が溝に突っ込む事故から始まる人間模様/人生交錯。半年前、人生は予測不可能で随分早いのね…警察が来ている。互いに絡み合っては、それぞれの立場のあるあるを盛り込んで掘り下げる普遍的共感性が導き出すテーマ本質。金銭にまつわる問題が導き出すのはお金の値打ちと人間の値打ち。

第1章 ディーノ
甘い話に飛びついて自滅。娘セレーナのボーイフレンドから金持ち一家に取り入ろうと醜いほど必死に頑張っちゃって不動産から投資家に鞍替え?ファンドに全財産どころじゃない金額まるっと出資、見るからに惨めすぎて呆れられるよ。見ていてイライラするアホだな〜と実に人間らしい"空騒ぎ"。双子を身ごもっている恋人(事実婚?)ロベルタのことなど放ったらかし浮かれっぱなしで地に足着いていない様子が描かれる。ジョヴァンニがテニスじゃないと言っているのに、ルンルン~♪でテニスする気満々で屋敷に向かってどれだけ話聞いていないか。何が楽しいんだか脳天気なこと。
予測が外れた。庶民が無理をして身の丈に合わないことをするから、他人事じゃない。それに今からお金が必要だって時に限ってだから上の空。欲を出して結局すべてを失うことになるのが関の山だったり、いっときの欲に駆られる間抜けさ。地道に普通が一番、その幸せを噛みしめる。

第2章 カルラ
これといった目的もなくただやり過ごす日々を無為に生きる中でやっと見出したのは、取り壊されかけな県最後の劇場(=女優だった自分の輝いた/確かに "生きた"場所)を守るというやりがい。一種のアイデンティティー・クライシスのように自分を見失いそうになっている、暇を持て余した有閑金持ち妻。除け者にされる孤独、寂しさ。まるでバカ扱いのように軽んじられる存在。年頃なピンク色ボクサーパンツ息子マッシにも疎まれる始末。かつて昔は情熱を傾けるものがあって、やりがいもあって輝いていたのに、今では本当の意味では自分を理解しようとはしてくれない夫と暮らす。生きる上で金銭/物質的にはこの上なく豊かで何も心配ないはずなのに、ここにはすべてがあって何もない。
そんな自分を理解してくれる人との出会い、趣味や表現への熱量を分かち合える人との情熱的な関係。相手は絵に描いたような"夢見る(=貧しい)芸術家"タイプ、久しぶりに感じる生きた心地。そして傾く生活で現実を意識し始め(ざるを得なくな)る…3人で話しましょう。危険を察知するなり再び丘の上の城に籠もり始める、素人のヘボ役者め!なぜそんなにイライしているの?俺は見たからな。あと20年もしたらあなたもきっと分かる。

第3章 セレーナ
何してるの、父親同士でダブルスなんて恥ずかしい…第一、私たち恋人じゃないし。継母一歩前の父親の恋人ロベルタのカウンセリングの待合で出会うルカ。大麻の罪をなすりつけた叔父と暮らしていて、皆があることないこと吹聴騒いではヤバいやつだと避ける不良問題児タイプ認定された/烙印を押された少年。新聞の一面も飾ったし街中の噂。元ボーイフレンド(?)の金持ち坊っちゃんあるある甘ちゃん自己中マッシ、父親からの期待や失望といった重荷に耐えかねて世話のかかるクソ野郎とは正反対のタイプ。そして明らかになる事故の真相…。

最終章 人間の値打ち
被害者が亡くなった…!交渉材料は真犯人、98万ユーロとキス。情けなさ過ぎて泣ける/笑える、まるでピエロ。あなただけが本当の彼を知っている。ルカはいい少年、彼のことが心配でならない。ややありがち展開に始終している気もするけど、実際見てみるとやはりよくできている。人間を測る物差しは?命の価値は測れるのだろうか?

勝手に関連作品『マッチポイント』『虚栄のかがり火』『バベル』『21g』
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