ラウぺ

緑はよみがえるのラウぺのレビュー・感想・評価

緑はよみがえる(2014年製作の映画)
4.2
第一次大戦中、イタリアとオーストリアが対峙する山岳地帯で寒さに耐えながら塹壕に籠るイタリア兵。
全編に漂う静謐な雰囲気、殆ど白黒といっていい彩度を抑えたカラー。
戦争映画とはいえ、血生臭く動的なシーンは殆どなく、外のシーンも薄暮か夜で、殆ど塹壕内で敵の砲撃を耐えしのぶ描写に終始した作品ですが、抑えたトーンが不思議な感興を呼び起こします。

監督のエルマンノ・オルミという人は初めて知りましたが、受賞歴多数で知る人ぞ知る巨匠の由。
監督の父親が第一時大戦に従軍した際に聞かされたエピソードを映画化した、とのことですが、なるほど、派手な戦闘シーンなどはなく、比較的小さな出来事が淡々と綴られていく描写には確かなリアルさがあります。
色彩の殆どないなかで、印象的なシーンははっとするほど美しく、それは人間の争いとは無関係な自然の景色であり、そのなかで兵士が斃れていきます。
上映時間76分とむしろ短編といった方がよい映画かもしれませんが、全てが控え目なこの作品はこれで必要にして充分、多くを語らずに多くのもの心に残す、大変印象的な一編でした。

ちなみに、冒頭流れるオルガンかアコーディオンの音楽の大変素晴らしいこと、これを聴くだけでも一見の価値のある作品だと思います。
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