ゆーきゃん

ボヴァリー夫人とパン屋のゆーきゃんのレビュー・感想・評価

ボヴァリー夫人とパン屋(2014年製作の映画)
2.8
びっくりするほどきれいな、フランスの片田舎。小説と同じように、もどかしい不満足と美しさではち切れんばかりの若い夫人。
彼女が若くて富裕な青年と一時限りの恋愛に溺れるのも、夫に距離を置かれるのも、昔の男に言い寄られるのもよくあるお話だが、
それを性欲と庇護欲の混ざりあった複雑な心情で見守っている視点から捉えた物語なのでおもしろかった。

主人公がエマのために作ったパンが、のどに詰まって死んだ、と最初に聞いたときはショックだったくらい。

三人の男に皆責任のある形で彼女が死ぬこの結末は良かったと思う。

相手をアンナ・カレーニナだと思い込んで話す最後のシーンがすごくよかった。笑えるだけでなく、長回しでカメラを引いていくんだけど本当にきれいで。

印象的だったのは、「田舎の方が抗うつ剤の服用者が多いんだ」という台詞。「彼は秘密の女ともだち」と二本立てで観たが本当に対照的な映画だった。田舎の生活は忍耐。子どものころから都会暮らしの人間には耐えられない、だからこそ田舎の風景は美しいんだろう。人間の方が我慢する側、劣勢だから。