垂直落下式サミング

BORUTO NARUTO THE MOVIEの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

BORUTO NARUTO THE MOVIE(2015年製作の映画)
3.8
『NARUTO』は子供の頃に読んでいた漫画作品のなかでも特にお気に入りの作品で、個人的な思い入れは強い方だと思う。とはいえ他の多くのジャンプ系バトル漫画と同じく、ラスト付近ではパワーインフレが行くところまで行き着いちゃった作品なのは否定しない。正直言うと、かつてないほどに強力な火力を持った敵を前にした主人公がそれを上回る超高火力を獲得することで上から押し潰すという戦闘を繰り返す少年漫画は好きじゃないんだけど、本作では世代が一新されたことで強さメーターが一旦リセットされ、今一度『NARUTO』という物語が当初描いていたテーマへと振り戻った感じがする。
父親たちの技を子供たちが継承していく姿がよかった。「あぁ…こいつが教える立場になったんだ…」と、この作品にリアルタイムで影響されてきた私にとって、馴染み深いキャラクターたちが師となっていたり、結婚して家庭を持っていたり、または仕事でそれなりの役職に就いていたりするのは、実生活と密接した感慨を抱かせるわけですが、本作の主人公はナルトの息子ボルトだ。
連載終了後のスピンオフ作品なのだから、新キャラを立てるより「誰と誰がくっ付きました」くらいの後日譚の羅列だけで終わったっていいはずなのに、そういったファンサービスには重きを置かず、少年ボルトの成長を描くことに徹した一本の長編アニメ映画としてウェルメイドな作品に仕上がっていたと思う。単なるテレビシリーズのおまけみたいな感じはしない。
周囲から偉大な父と比較され、その重圧から屈折してしまう息子ボルトの姿がグッとくる。ボルトは誰でも忍術を扱える装置を使って試験をズルでパスしようとするのだが、彼にも罪悪感が無いわけではない。子供が何か後ろめたいことを大人に隠しているうちに、引っ込みが付かなくなっちゃう場面には心臓がキュッと締め付けられてしまうような切なさがある。
原作漫画であそこまで主人公を強くしちゃった手前それこそ引っ込みは付かないと思うのだけれど、7代目とサスケくんがちょっと強すぎる。でも、ラストシーンのチームワークによる奇策でもって相手の武器を破壊する場面は「なぜ彼が勝てたのか」ロジックがしっかりしており、チームプレーを蔑ろにし簡単に強くなれる装置に頼ってきたボルトが敵の強化ツールを打ち砕く場面は、彼が真に己の鏡に打ち勝ち決別する瞬間を見事に演出していた。
ラジオの映画評論で有名な町山智浩さんとライムスターの宇多丸さんをモデルにした科学忍者が登場するのにも注目。悪役っていうかトラブルを招くトゥーミーさんの役割なのですけど、今ジャンプやってるスピンオフ漫画にもそのままのキャラで登場するので、けっこう格好いい。
あと、お坊っちゃんだった木ノ葉丸くんは猿飛の姓に恥じないエリートイケメンに成長したので、木ノ葉丸ファンとしては嬉しいかぎりです。