東京キネマ

AMY エイミーの東京キネマのレビュー・感想・評価

AMY エイミー(2015年製作の映画)
4.0
“まるで65歳の熟練のジャズ歌手みたいな歌い方だ。18でこれじゃ、25になった時、どうなるんだと思ったよ”とは、プロデューサーのサラーム・レミがエイミー・ワインハウスと初めて会った時の感想です。実際の映像で見ると、これが全く嘘でないことが分かります。もう、何というか、最初から、ぶっちぎりに凄いですね、この人。。。

でもね、エイミー本人はちょっと不気味なことも言っていて、英紙『オブザーバー』の“君はどこまでビックになるの?”に答えて、“ならないわ。私の音楽は一般受けしないから。売れたらいいと思う時もあるけれど、私は有名にはなれない。もし有名になったら、対処できなくて頭が変になるもの・・・”と言っています。本編通して見ると分かりますが、この人、本当に売れる訳がないと思っていたみたいで、いきなり売れてどう対処して良いか判らなくて右往左往している感が随所で見られます。

既に13歳の時から過食症と自傷行為で抗鬱剤を常用し、恋愛をしてからは、その相手の嗜好に併せるようにクラックとヘロインとアルコールの日々だったようです。まるで映画『ローズ』のストーリーです。生きること自体が自傷行為のような感じです。トニー・ベネットが最後の方でナレーションで言っていましたが、“彼女が生きていたら言いたい。生き急がないでくれ。君は貴重な存在なんだ。もし長く生きていれば、生き方は人生から学べるんだ。。。”は、その通りなんでしょうけれど、多分彼女は現実でも周りからそう言われ続けていた筈で、それでも生き方を変えなかった(変えれなかった、ではなくね)、というのが本当のところなんだろうと思います。これも、このドキュメンター全体から感じることなんですが、彼女の場合、「生きたい」欲求というものが全く感じられません。自ら好んでドラッグの海に特攻ダイブを繰り返している感じです。

ですからね、彼女は彼女の生きたいように生きたとしか言いようがないんですよね。。。
東京キネマ

東京キネマ