和桜

クリミナル 2人の記憶を持つ男の和桜のレビュー・感想・評価

3.8
目前に迫るミサイルテロを防ぐため、貴重な情報を握ったまま殺害されたCIAエージェントの記憶を、凶悪犯であるジェリコという男に植え付けさせる。
そんな派手なアクション映画になりそうな設定だけど、これが意外に内面の葛藤をきちんと描ききり、ハートフルな内容となっている。

感情を理解し、愛を知るというありがちなパターンだけど、丁寧に描かれているからすんなり感情移入できる。
開幕、刑務所の常連は社会生活という概念を理解できないんだ、という力説から始まる。衝動の抑制や社会適合ができず、行動の結果を考えることもできない。他者へのおもいやりも皆無。彼らは感情を持たない、憎しみも愛情も。矯正するのは無理だ、罪の意識をもっていないからだ。そんな彼の物語だからこそ意味がある。

ここで大事なのは、人格を入れ替えたわけではなく、記憶を移植しただけという点。記憶があるだけなのに、ふとした行動で彼の人格が乗り移ったかのような行動を取ってしまう。
何かを見たり嗅いだりすると知らない記憶が蘇る。それはただの映像だけではなく、確かにそこに何かを感じる。それは彼が今までの人生で感じえなかった感情。
所々の描写が細かくて、記憶が感情を生み出しているのかも知れないと自然と思い至ってしまう。
正直、テロ事件とかいらなかったよなと思うくらいにはドラマとして面白い。
和桜

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