YYamada

奇蹟がくれた数式のYYamadaのレビュー・感想・評価

奇蹟がくれた数式(2015年製作の映画)
4.0
【アカデミック映画】
 ~映画を通じて功績を学ぶ~

◆人物
🇮🇳シュリニヴァーサ・ラマヌジャン
 (1887年12月22日 - 1920年4月26日)
🇬🇧ゴッドフレイ・ハロルド・ハーディ   (1877年2月7日 - 1947年12月1日)
◆学術分野
 数学
◆映画で描かれる功績
「分割数の漸近式」を証明

〈見処〉
「ラマヌジャンは、あらゆる正の自然数と友達なんだ」

①現代につながる功績は!?
・『奇蹟がくれた数式』(原題:The Man Who Knew Infinity)は、2016年に公開された伝記映画。主演は『スラムドッグ$ミリオネア』のデヴ・パテルが務める。
・ときは第一次大戦の戦火を目前に控える1914年。インド・マドラスに住むシュリニヴァーサ・ラマヌジャン(デヴ・パテル)は、数学分野に天才的な才能を持つ若き事務員であるが、学歴や定理を証明する訓練を受けていなかったがためにインドでは評価されず、上司の薦めにより、宗主国イギリスの大学に対して多数のレポートを郵送していた。
・うち一通が、英国ケンブリッジ大学の数学者ハロルド・ハーディ(ジェレミー・アイアンズ)に届くが、そこには驚くべき定理が記されていた。ハーディはラマヌジャンをイギリスに招聘したが、学歴もなく身分も低い彼をケンブリッジの教授たちは拒絶。孤独と過労が重なり弱りゆくラマヌジャンに対して、ハーディは奇蹟の証明に立ち上がる…
・本作は、アインシュタイン並みの天才と称された「インドの魔術師」ラマヌジャンが英国在学時に「分割数の漸近式」を証明し、英国王立アカデミーのメンバーに認められる偉業が描かれている。
・作中で言及されているように、ラマヌジャンによる定理への着眼点は、神の声が舞い降りたかのように、どのように思い付いたのか見当がつかないものばかり。それらは過去の研究者の成果をもとにした論理的必然性がなく、彼とハーディがいなかったら、現在でも発見されていないものだそうだ。
・ラマヌジャンの学術成果は、ブラックホールの研究や、回線の切断に強いインターネット網の研究など、ラマヌジャン没後100年が経って、今ようやく理解され、役立ち始めているのである。
・時代より100年進んだ研究…ではなく、100年後の現在を構築した奇蹟の原点が本作にて鑑賞出来る。

②時代背景を学ぶ
・インドにおける英国の植民地統治は、19世紀中盤にヒンドゥーとイスラームの対立を利用して進めてきたが、宗教上の障害は本作の時代も色濃く残っている。
・本作序盤にて、ラマヌジャンが若妻を残し、インドに旅立つ苦悩が描かれているが、その背景は、彼の家庭が敬虔なヒンドゥー教徒であり、カースト制度の最上級のバラモン階級にあったため。
・現地を離れ海外渡航するということは、バラモンの戒律を破り、社会的に抹殺されることを意味していたが、周囲の支援と神の特別な許しも得て、ケンブリッジ入りが出来たようだ。
・また、ラマヌジャンが英国で体調を崩していくのは、彼が菜食主義でバラモン以外の者が料理したものを不浄として口にしないという主義を貫いていたためであり、更に第一次大戦の影響で野菜等の入手も困難になったことが要因のようである。

③結び…本作の見処は?
○: もしもこの二人が出会わなかったら…数学に興味の無い人でも、彼らの偉業によって世界が変わったことを理解出来、胸が熱くなる。(数学がわかった気にもなる。)
○:学びの殿堂、英国ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ。建物内部が撮影された初めての作品であり、ニュートンが重力の法則を発見したリンゴの木など、荘厳で興味深いロケーションを堪能出来る。
▲: インド文化や歴史背景に、あと一歩の描写があれば、ラマヌジャンやインドに残る母嫁の苦悩がより鮮明になり、共感が増したような気がする。

※本作はフォロワーのyukiさんにご紹介いただきました。良作ありがとうございました!
YYamada

YYamada