鹿江光

ラ・ラ・ランドの鹿江光のレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
4.0
≪80点≫:夢追い人たちの天秤。
夢を見るのは簡単だ。でもそれを実現しようとすると、途方もない努力と挫折と喪失を繰り返さなければならない。夢を叶えるためには、それに見合った何かを手放す必要がある。時にそれは「信念」であったり、「プライド」であったり、「人間関係」であったり、「心」であったり……。傷付かずに夢を叶えることなどできない。それなのに何故、夢追い人はこんなにも美しく、ドラマチックに映るのだろうか。
本作が描くのは、≪LA LA LAND≫という“夢”の中で見る“現実”だ。歌って踊るミュージカルという一種の異世界を体験しながら、進む道はどこまでもリアリティに溢れている。その内容も決して他人事ではなく、夢を追う者・追った者ならば誰もが共感できるであろう感情・出来事ばかり。歌って踊らなきゃ、どうにもこの現実は生きていけない。
冒頭数分であっという間に心を掴まれ、そこからはラストまで一気に見入ってしまう。まるで魔法にかかったように、心がリズムを刻みだす。ミュージカル映画への造詣はそんなに深くないが、名作のオマージュというか、「これぞ!ミュージカル!」といったシーンも多く、違和感を当たり前のものとして表現する面白さが全面に広がっている。登場人物の衣装もオシャレ&カラフルで、視覚情報だけでも充分に楽しい。
そしてなんといっても……あのラストシーン!ものすごく痺れた。「夢を追うこと・叶える人生」の答えがすべて詰まった数分間。切なくて、苦しくて、でも心残りのない幸せが胸いっぱいに広がる。ラストカットの画面に広がる登場人物の姿を見て、ついに心を撃ち抜かれる。「あぁ……なんて美しいんだ……」そう思いながら僕は涙を流した。「これで良かったんだ」と、祝福と悲哀の余韻を感じながらエンドロールが始まる。夢追い人たちが、夢と一緒に天秤に乗せたものとは一体何だったのか。全てはラストのあの一瞬のためにある。それは夢から覚める瞬間。魔法が解け、現実を生き始める瞬間でもある。
サントラが欲しくなっちゃうね、ミュージカル映画は。とっても面白く、好きになる作品だった。
鹿江光

鹿江光