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ラ・ラ・ランドのおとなのみほんのレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
3.8
ラ・ラ・ランド。
それは一人の鼻歌のようで二人のラブソングのようで、華やかなミュージカルのようで。

夢が創り上げた街、ロサンゼルスを舞台に自信へ縋り、喪失に踏まれ、愛に浮かれるひと時の男女を我らがエマストーン&ライアンゴズリングの好演!そしてデイミアン・チャゼルが31歳にして、心が擦り切れる程の美しい情熱を描き切った素晴らしい作品!評価しない訳がない!!
おいワインスタイン、これが映画だ馬鹿野郎!!


---------ネタバレ含みます!----------


まず画面一杯に広がる鮮やかなビビッドカラーに、ロサンゼルスの街、華やかな衣装に混ざるラフなシティガール、音楽という言葉が弾けてしまうくらい陽気な楽器隊!ここでは誰もが自由なアクター!ようこそララランドへ!

しかしこのオープニング、カラフルな車は段々と寒色に変わりオールブラックの車を背後に鮮やかなイエローのワンピースが映える。こんな盛大なのに、頭からチャゼル監督の何処か現実との決別ラインをはっきり線引きしているところに引き込まれる。
このオープニング曲「アナザーデイオブサン」は、先行きの見えない歌手たちの不安についての歌でもあり、作詞家のポールは「夢を追い、寝床に入って翌朝起きれば、素晴らしい一日になる。そうすれば一息つけるし、その一息は自分が惨めにも失敗したなんてことを認めさせようとはしない。起きた時の気分に失敗は似合わない。光り輝く一日になるんだ」と。チャゼル監督はロケーションを「オズの魔法使」に登場する黄色いレンガ道になぞらえたらしい。


オープニングでがっちり心を掴まれときめきが最高に上がる分、主演2人の歌とダンスの下手さに最初は座席からずり落ちて、繰り返し使われる曲もあれ?また?と思ってしまうんだけど、段々とこの曲のしつこさが彼らから滲み出る執念にも感じて、不器用な2人がまるで夢に浮かれて踊らされる捻りたりなかったオルゴール箱の飾り人形にも見えて。
映画と言う新しいものを生み出す職業である女優を目指すエマと、JAZZと言う古いものを掘り下げるライアンゴズリングの点と点が線として繋がれ枝分かれして行く様はたった2人の人生が物凄く深く表現されていて、必死に自信へ縋り舞台へ上がるエマの姿、ライアンゴズリングの音楽への愛情とその孤独に堪らなく胸を撃ち抜かれる。

またチャゼル監督のJAZZへの深い愛と、そして憎しみを詰め込まれたライアンゴズリングを残し、華やかな姿のエマが立ち去るシーンはチャゼル監督自身の挫折でもある。幼い頃に映画をつくりたいと憧れたが、JAZZへ。しかしJAZZを諦め、映画の世界へ。その根底にはやはりJAZZへの捨て切れない愛と感謝がある。
セッションでの大成功がそれを証明した。
これは、チャゼル監督の切なくも美しいJAZZへのラブレターだ。