ぎー

ラ・ラ・ランドのぎーのレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
4.0
「夢見る愚か者たちに乾杯」
チャゼル特集2作品目。
俳優の卵とジャズピアニストの卵の恋愛を描いたミュージカル映画。

夢を若者が追い続け、夢が叶う、凄くドライな言い方をすると夢に溢れたファンタジー映画。
でも現実世界でビジネスに生きている自分の生き方を見つめ直させられるような気持ちになった。
夢を追って生きていると確信している人にとっても、背中を押される映画だったんじゃないかな。
そして壁にぶち当たっている人にとっては勇気を与えてくれる映画だったと思う。
どんな人であろうと、夢に向かって一生懸命情熱を持って取り組む人には感動させられる。

とは言え、そういう夢に溢れた映画は一歩間違うと青臭くて、安っぽい映画になってしまう。
言うまでもなく、この映画の演出力は素晴らしく、そんな懸念を一瞬で振り払ってしまう。
作中の音楽はことごとく魅力的で、ダンスもお洒落。
1番印象に残っているシーンは、セブとミアが夕焼けのロサンゼルス郊外で初めて一緒に踊る場面。
映画のストーリー的には山場でもなんでもないのに、音楽、ダンス、背景のロサンゼルスの夜景、そして、ゴズリングとエマ・ストーンの2人がとにかく輝いていて、圧倒されてしまった。
カメラワークも見事だし、何より色遣いが印象的だった!
ミアが身につけている服、ロサンゼルスの空の色。
上品に原色を使っているのが凄かった。

メインのストーリーとなるセブとミアのラブロマンスもとんでもなく魅力的。
お互いがお互いの夢に全力投球し、お互いがその全力投球を支え合い、終いには夢を邪魔しないために別れる。
あんな前向きで達観した男女の別れなんてあり得ない!
でもすっかりこの映画の世界観にのめり込んでしまっている僕らは、完全に感情移入して、2人と一緒に感動して、悲しむ。
本当によくできた映画だった。

冒頭ロサンゼルス高速道路の"Another Day of Sun"は最高だし、本当に良くできている!
世界中の観客が一瞬で映画の世界観に入っていく。
そして全員の心にこのシーンが深く刻まれる。

序盤ミアがパーティーに参加する場面の"Someone in the Crowd"は映画の中で一番好きな曲!
エマ・ストーンズがイケイケ!
本当にお洒落で格好良い。

この映画にとって大事な曲になる"Mia & Sebastian’s Theme"を初めてミアが通りがかりに聞く場面も印象的。
2人の関係性はこの曲に始まりこの曲で終わることになる。
ゴズリングは自分でピアノを弾いているそう。
凄い!

昼間のパーティーで偶然再会したシーンはコミカルで楽しい!
ゴズリングの表情表現が良いね。
その後の夕焼けを前に"A Lovely Night"に合わせて踊る場面は、既に書いた通りこの映画で最高の場面。
セブが1人で埠頭で"City of Stars" を口ずさむ場面もお洒落だった!

2人は同棲を始めるけど、夢を追い求めて一人芝居の準備をするミアと、生活資金を稼ぐために旧友キースのバンドに参加するセブの間にすれ違いが生まれる。
とはいうけど、自分からすると、売れているキースの仲間として大好きな音楽を奏でられるのだから、十分に夢に近いことをやっている気がするけどな。
映画の世界にどっぷり浸っていても、ここだけは違和感感じたかも。
ミアの誕生日会での喧嘩も、さすがにセブが可愛そうな気がした。

一人芝居自体は大失敗に終わったけど、演技を見てキャスティングされた時は僕も自分のことのように嬉しかったし、大喜びしているセブも素敵だった!

ラストシーンの感動はもう書いた通り。
往年のミュージカル大作「雨に唄えば」を想起させられた。
そして、個人的には「雨に唄えば」を凌駕していたと思う。

現代ミュージカル映画のヒットが世界的に続いているけど、その大きな勢いづけとなった一作であることに間違いない傑作だった。

◆備忘ストーリー
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ラ・ラ・ランド
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