このレビューはネタバレを含みます
初見時は予告編とのあまりのギャップやほろ苦さにとまどいの方が強くそこまでハマらなかったものの、サントラを聴き、歌詞の意味を吟味し、2度目の鑑賞で完全に主演の2人に心を奪われてしまい、以来大好きで大切な作品となってしまいました。
スマホで映画が観れる時代に映画館で観る作品を撮りたいという監督の思い通り、本当に全編にわたって色彩豊かで夢のような世界が広がっている。音楽はミュージカル映画にしては少なめに感じる部分もありますが、この映画の場合は、無闇に本筋と関係ない歌やダンスシーンがあるのではなく、「恋をすれば歌わずにはいられない」「天に昇ってダンスをせざるをえない」という演出や演技の延長上にあり、そこがまたいい!
ラストのミアのオーデイションシーンは鳥肌ものですが、その後のエンディングが更に素晴らしい。誰もが感じる、あの時こうしてれば?という苦く切ない思いを音楽に乗せる9分間のエンディング、誰もが自分の人生と重ね合わせてしまうのではないでしょうか。
また、エンディング後も2人の主人公がしっかりと前を向いて歩いており、人生は続くということを暗示させる、優しい、最後の最後の数秒のエンディング。
「夢を、見ていた」という日本版のキャッチコピーにふさわしく、2時間強、まるで夢を見ていたかのような幸福な映画体験でした。
天才と賞賛される若きデミアン・チャゼル監督、この一作だけで完全に降伏します。