優しいアロエ

ラ・ラ・ランドの優しいアロエのレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
4.6
【過去鑑賞作品 68】

〈大切な過去に彩りを〉

 かつての傑作にウィンクを交わしつつ、デイミアン・チャゼルは新たなスターの失われぬべき原点を美しく彩った。
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 本作は大女優ミアの懐古譚だ。夢と現実の狭間を奔走していた下積み時代の淡い思い出を、アルバムを見返しながら懐かしんでいるような趣がある。

 夢の街L.A.で光を浴びるには、その影も背中で感じなければならない。されど本作は、その影すらも美しいのだと、軽く微笑みながら肯定してみせたのだ。

 「夢と現実は両立できない」という『セッション』『ファースト・マン』同様のチャゼル論を抑えつつも、この映画は決して険しい表情を見せない。過去のミュージカル映画のオマージュと、マジックアワーを見計らった撮影に力点を置いたところからも、常にどこか「余裕」のようなものを感じさせる。

 夢と現実。それらは完璧な形で手に入ることもなければ、まったく叶わないということもない。人生はいつも苦味を伴いながら前進していく。本作はそんなモノクロと化しうる思い出に彩りを与え、それらが全てあって今のあなたがいるのだと気づかせてくれる。
優しいアロエ

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