Torichock

インクレディブル・ファミリーのTorichockのレビュー・感想・評価

3.0
Disneyと僕の付き合い方

Disneyが21st Century Foxを買収した話は、今年の4月にニュースで目にした。
それが、僕たち映画ファンにとってプラスに働くか、はたまたダメージを与えるかはわからないが、ここ最近のDisneyについて思う事があるので書きます。

Disneyが作るアニメーション作品の全ては、超頭がいい人たちが、超時間と努力と執念をかけて練りに練った、超高水準の作品だらけ。
そして、そのDisneyが手がける実写作品も、特にMCU系の作品に関していえば、高い質の作品が連発されるようになったし、マーケティングや戦略も鉄壁な姿勢をとり続けてる。

要は、Disneyの手がかかったものは、どの作品も軒並み良質なものが多い、という風致が強くなってきた。

しかし、弊害ももちろんある。
そして僕個人としては、その弊害はとても見逃せるものではないというのが今の気持ち。

まずは、Disneyが作品を管理するという事。
それはすなわち、Disneyによる検閲がかかるようなものだと、僕は捉える。
要するに、

"Disneyの考えに背くものはいらない"

という考え方。

その何が間違ってるのか?と問われれば、間違いではない。でも、少なくとも、Disneyが買収した作品群やシリーズの中では、永遠に"Disneyの考え"に従うしかなくなる。
これは、見る側がそれで良しとするならまだしも、作り手たちに対しても、従順な姿勢をとらせる、それに従えないのなら外されるわけだ。(ジョシュ・トランクやジョス・ウィードンの降板劇に見られる)
そのくせ、「最後のジェダイ」の様な劣悪な粗悪品を、買収してウハウハなSTAR WARSシリーズの、しかもメインストリームの方で容認するのだから、そのバランス感覚に関しては、少し疑いを持ってしまう。
ここから、次の話にフェイズがつながるのだが、キャラクターという点。

確かにDisneyのキャラクターは愛らしく、人気が出るであろう。(そりゃ、グッズもバカバカ売れる)
それは全然いいことだと思うし、僕もプーさんのグッズには目がない。だけど、ここで一つ重要なポイントを忘れてはいけない。

Disneyの世界観の中で、

キャラクターの愛らしさ=物語の正しさ

と地続きにすること。
つまり、人気キャラクターが行う行動原理が、"善きこと"として映されるからだ。
(だから、Disneyは度々悪役の描き込みがぬるいという指摘を受けている。)

ちなみに、STAR WARSに関しては、この考えは含まれない。
なぜなら、STAR WARSはすでに、Disneyにとって金の成る木であり、
"新作作ってキャラクター出せば、ファンは買うだろ、どうせ"ぐらいにしか考えてない感じが、作品にもろに出てしまってるからだ。

話を戻します。
そういった意味で、
家族愛のために、国民に迷惑をかけても、それが家族愛の表現のためなら、何の問題もなく、良い物語だという考えを示す「アナと雪の女王」のシリーズが嫌いなのだが、実はアナ雪だけではなく、Disneyのお話には、こういうモノがとても多い。
しかし、Disneyの恐るべき作品のクオリティと、愛らしいキャラクター造形と、音楽のセンスや諸々で、"消臭"は出来てる。

夢の国、とはよく言ったもので、Disneyは、映画の世界においても、一度足を踏み入れてしまうと、そこでは一個人の考え方・捉え方を奪い去る魔力がそこにあるのだ。

しかし、一歩引いて考えてみよう。
それは、ほんとに良い話なのか?
批判ではない。

Disneyに身を任せて、Disneyの決めた善きことにどっぷり浸かって、Disneyが示した幸福と夢と未来に染まるのであれば、それこそ、ランド内のアトラクションと同じ、座って目の前に起こることに口をあんぐり開けて見つめてるだけで、それはそれで幸せに生きていけるでしょう。

しかし、それこそディストピアと紙一重なのではないだろうか。
Disneyは夢の国か?はたまた帝国か?

せめて僕は、映画の中では、Disneyのロゴが出たら、構えるようにする。

Disneyは素晴らしい。
しかし、忘れてはいけないのは、彼らが提示するものが全て、正しいということではないこと。

何より、人種差別に対する考えを、コミックを使って間口を広げた張本人であるスタン・リーが作り上げたMARVELが、ゴリゴリの人種差別主義者だったウォルト・ディズニーの世界に買収された事実も胸にとどめながら、ね。




「インクレディブル・ファミリー」

ちゃんとまとめて追記します。
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