ノラネコの呑んで観るシネマ

LION ライオン 25年目のただいまのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.5
5歳から25年間迷子になったインド人青年が、グーグルアースで家を見つけ出したという話は報道されたのを覚えている。
とは言ってもパソコンで地図をひたすら見つめても、あまりドラマチックな画にはならないので、実家探しはあくまでも背景。
前半がインドを舞台にした幼年期、後半がオーストラリアでの青年期という構成で描かれるのは、人が人を思いやることで生まれる"痛み"の物語。
主人公はとことん誠実で優しい男だから、生みの母を探すことは育ての母への裏切りと考えてしまう。
二人の母への想いによって、息子として抱く大きな葛藤と、繊細な心理描写が本作のキモだ。
幼年期をじっくり描いたこともここで生きてくる。
なんで「ライオン」なのかが明かされるラストも納得。
これはタイトルを最後に出した意味があった。
「スラムドッグ」の少年も随分たくましくなったが、本作では彼を支えるニコール・キッドマンとルーニー・マーラーの二人の女性がいい。
しかし子供を取り巻くインドの闇は深いな。
コルカタで攫われた子供たちは一体どうなったのか。
育ての母と生みの母の話という点では、事情は違えど中国の「最愛の子」を思い出した。
映画の中でフィクションと現実を繋げる工夫があるのも同様。
この種の実話ベースは、とりあえずホンモノの人たちが幸せだとホッとするよ。