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LION ライオン 25年目のただいまのyapのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

2017.04.13鑑賞。幼い頃に、誤って回送列車に乗ってしまい、1600㎞インドを横断してしまった少年サル―。その後、児童養護施設を経て、オーストラリアの裕福な家庭に養子として迎えられ、何不自由ない生活を送り、すっかり身も心もオーストラリア人になったのだった。しかし、大学生になったある日、ふとしたきっかけで自分の壮絶な過去を思い出し、グーグルアースをつかって自分の故郷を探しはじめる。という衝撃の実話。
グーグルアースを使って探すというフックのある話だが、出落ち感は否めない。いわゆる「母を訪ねて三千里」的な道中の出会いや成長がないのだから。さらに、実話のため、脚色も難しい。そんなお話をつくる上で、ハンデしいかないこの物語を、実にうまく構成・映画化したと思う。
サル―が迷子になるまで、そして、養子にだされるまでを丁寧にじっくりと描く。少年期のサル―が超絶可愛いし、兄とのやり取りが抜群!弟思いの兄であることが実によく伝わるのだ。これがラストに実に利いてくる。そして、回送列車に乗ってしまい、インドのカルカッタに到着するのだが、大都市で人がわんさかいるのに、言葉も通じないという、圧倒的な孤独をサルーが味わう。さらに、怪しい輩による子ども狩りに遭遇するし、寝食を与えてくれた優しいおねえさんもまたその一味のように思えて、逃亡するサルー。ひたすら手に汗をにぎる前半パート。
オーストラリアに向かう飛行機内のサルーを映すカットが、回送列車に乗った時のサルーのカットと同じ構図で、再び迷子になる(家族と離れる)ということを強調しているのも実に巧みだ。

ロードムービー的人との出会いが無い代わりに、家族探しを始めるサルーのもとに立ちふさがる障害(精神を患っている兄の面倒をみることで、弱っている両親にたいして、本当のお母さんに会いに行くなんて言えない)がきっちりと利いている。この障害を乗り越える際の、ニコール・キッドマンが実にオイシイ。「あなたがこんなに立派に育った姿をみせてあげて」という聖母のようなセリフはもちろんのこと、サルーたちを養子にとった理由が、不妊に悩んだ結果ではなく、子供を産める身体であるけれども、貧困に悩む子供を救ってあげたいという聖母を通り越して、神さまのような思想の持ち主に驚愕。
親子との再会シーンはただただ涙。
自分の住んでいるところはおろか、自分の名前ですら間違っていたというオチも驚愕。これは、実話だからこそ、納得できる強みだろう。
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