ぴのした

LION ライオン 25年目のただいまのぴのしたのレビュー・感想・評価

3.9
図らずも感動した。「インドで迷子になった子供が25年ぶりにGoogle earthを使って家族の元へ帰る」という実話を基にした映画なんだけど、ただそれだけの映画ではない。

これは主人公サルーと、オーストラリアの育ててくれた家族とインドの産みの親の家族、二つの家族の物語。サルーの帰りを待ち続けたインドの家族との愛情、そして自分の子を産むより1人でも恵まれない子供を救いたいとインドからわざわざサルーとマートッシュを養子にし愛したオーストラリアの家族の愛情。サルーを取り巻くその2つの家族の愛情を心底感じる物語だった。

命がけで盗みを働いてもお菓子の1つも買えない、女子供が石を運ぶ重労働をし、迷子になれば人買いに攫われる。優しくしてくれた人もいたかと思えばやはり人買い。映画とはいえ、インドは今なら少しはマシかもしれないが、実際まだまだ今も問題として残っているだろう。たまたまサルーはいい人に出会い、恵まれた環境に身を置けたから良かった。でも映画に描かれた攫われた子供達は、オーストラリア人に拾われなかった孤児院の子供達は、一体どうなったのか。そこまで考えさせられる社会的なテーマの深みのある作品だった。

そして最後にわかる「ライオン」の意味。図らずも帰郷したサルーがライオンのような髪と髭を備えていたのは演出にすぎないかもしれないけど、映画的にはすごく面白みがあってよかった。

最後に出てくる実際の映像や写真がすごくキャスティングに似てた。実際にその人たちを見るとああ、本当にお互い愛し合ってるんだなというのがよくわかるというか、顔や仕草からその人たちの人の良さが伝わってくる。

映画としても面白く、なおかつ深いテーマのある作品。最近だとドリームやムーンライトに近いものを感じた。