海老

LION ライオン 25年目のただいまの海老のレビュー・感想・評価

4.2
実話をもとにした映画だとは知っていたのですが、こんな壮絶な話だったとは…。

冒頭、サルーが兄のグドゥとはぐれ、見知らぬ土地に放り出されてしまう部分。これが日本なら誰かしらに保護されようものですが、インドの深刻な貧困社会においては、何度か人身売買の危機に晒され、とても子供一人で生きていけるような世界ではないと痛烈に思い知らされます。
サルーは運良く保護される流れになりましたが、サルーの目の前で連れ去られていく子供の描写などもあり、子持ちの親としては痛ましい現実に目をそらしたくもなりました。あの不安感、絶望感には息が詰まるかと思いました。

オーストラリアの夫婦に養子ときて迎え入れられてからのしばしの安堵。テーブルマナーを少しずつ覚えていく幼少サルーがとても可愛らしい。後からですが、この子役すごいなと何度か思うシーンがありました。

物語の核心になるのは、青年になったサルーが、産みの親を忘れられず、大学の友人達の助言と協力を得て故郷探しをするところ。
サルーが産みの親も育ての親も本当に大切に思っていて、どちらかを選び捨てるようなことはしたくないと苦悩するシーン。産みの親を探すことは、今の育ての親への裏切りだと自らを責めるところは、痛々しいほどでした。

マントッシュとの衝突、ルーシーとのすれ違い、両親ともぎこちなく…と、安寧な暮らしが歪んでいく部分で再び息苦しさを感じたものですが、そのぶんラストへの流れは、堪えていた涙が一気に溢れてきました。詳細はかけませんが、首筋をつたるほどに涙がこぼれました。

こんな壮絶な話がノンフィクションというのが信じられない。とても良い物語を見ました。
海老

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