やし

LION ライオン 25年目のただいまのやしのレビュー・感想・評価

3.5
「僕は迷子なんだ」


まず、
前評判では聞いていた、Googleを使った故郷探しの過程や、ラストで明かされる"タイトルの意味"、
大きな感動を呼ぶ場面ではあろうが、それよりも何よりもこの映画に圧倒されたのは、本作と同じくインドを舞台とした『スラムドッグ$ミリオネア』や、『グッド・ライ いちばん優しい嘘』(スーダン)でも描かれていた貧困層の過酷な暮らしだった。

迷子前後のシークエンスとして、序盤でたっぷり描かれるその"現実"は、今の日本人には想像すら難い、同じ地球の話とは思えないぐらいの別世界そのもの。


5歳という幼子が1,600km離れた遠方で迷子になる。
(演じる男の子がまた可愛い)
しかも、多言語国家故に言葉も通じず、やっと言葉が通じる人に出会ったかと思えば、そのまま性の対象として売られそうになったり、
保護施設に入ったかと思いきや、そこはまるで刑務所のような暮らしだったり。


……同じ現代で、同じ世界で、同じ命で、なんていう違いだよ。


だから、この子がオーストラリアの夫婦に養子入りになった時はこちらが救われる思いになった。
(本当はこの親たちも何か裏があるんじゃないかと最初疑ってしまっていたけど…)

しかも、物語後半、この夫婦が養子をとることについて我が子に語るシーンでは感動…というよりその理由に絶句してしまった。
(詳しくは本作を観てね 1H24M)


観ていて辛い部分もあったけど、実話ベースものとして結末に驚きがないにも関わらず、感嘆、感動を味わえる作品でした。
やし

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