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LION ライオン 25年目のただいまのnaoズfirmのレビュー・感想・評価

4.1

嘘のような本当の話🎬

ストーリーは5歳で迷子となり、オーストラリアの夫婦に養子にもらわれた主人公が本当の家族を探す姿を描いた作品でした。Google Earthは偉大です。今作はアカデミー賞「作品賞」「助演男優賞」「助演女優賞」「脚色賞」「撮影賞」「作曲賞」と合計6部門でノミネートされました。今作は見所がたくさんあります。1つ目はキャスト陣です。サルー(大人)役を演じるのはデブ・パテルです。インド系の血筋ながら、ロンドン出身のイギリス人であるデブ・パテルにとって、本作でのサルー役は、自分自身のルーツと重なり合う部分の多い適役です。また本人が熱望してサルー役を射止めたのは、本作品にとって一番の幸運だったと思います。クランクインまで8ヶ月間、役作りのため食事療法で増量し、オーストラリア訛りを完璧にモノにして挑んだ今作では不自由ない温かい家庭で育った知的で落ち着いた若者が苦悩する姿を的確に演じきっていました。

そしてサルー幼少期を演じたサニー・パワール君です。インド全土から幅広くオーディションを行って選ばれた天才子役です。とにかく愛くるしくかわいい上、どこか陰りのある悲しそうな憂いを湛えた表情がたまらなかったです。今後の活躍に期待です。映画撮影時、若干5歳だったとは思えない素晴らしい演技が最高でした。喋り方や出で立ち、そして純粋無垢な瞳が作品と見事にマッチしていて、とにかく愛おしいほど可愛いしその分感情移入してしまい、序盤からボロボロ泣きまくりました。

そしてそしてオーストラリアでのサルーの母親役を演じたニコール・キッドマンです。本当に素晴らしかった。トム・クルーズとの結婚生活中、2人の養子をトムとの間に迎えた実体験もあるニコール・キッドマンが選ばれました。親族との打ち合わせの際に、親族側からの発案で選定されたそうです。温かみが滲み出ていました、

2つ目は母との奇跡の再会~エンドロールです。
記憶を辿りながらようやく実家へとたどり着いたが、そこには母の姿はなく、ヤギの家畜小屋になっていました。ここまでたどりついたのにー、、悔しさと絶望感から壁を叩いて悔しがったサルー、、しかし奇跡がサルーの母は、いつかサルーが戻ってくることを信じて、決してガネッシュ・トレイの近くを離れませんでした。サルーと母親は、すぐにお互いのことを理解しました。お互いに言葉が通じなかったが、彼らは固く抱き合って再会の涙を流しました。母親は、サルーの額の古傷を見て、たしかに実の息子であると...。サルーは、妹のシェキラとも再会を果たしました。しかし、兄のグドゥは彼と生き別れたその日に、別の電車にはねられて死亡していたのでした。この結末はあまりにも辛かったです。

そして「サルー」という名前は、彼の聞き間違えであり、本当は「シェルゥ」が正しい発音であり、ヒンディー語で「ライオン」という意味だったのです。ライオンっていう意味を知り、まさに自分の過去と向き合い、25年越しに故郷に帰ったサルーの決断力・勇気はライオンの様だと感じました。

3つ目の見所はインドの過酷すぎる実情です。インドといえばカースト制度。カースト制度とは、インドで生まれた独特の社会的身分制度のことで、インドでは「ヴァルナ」「ジャーティ」と呼ばれています。ヴァルナには、4つの階級が存在し、上からバラモン、クシャトリヤ、ヴァイシャ、シュードラに分けられ、そしてジャーティは、カーストをさらにそれぞれの職業で細分化したものです。現在はカースト制度の文化は無くなりつつありますが、少し前まではカースト制度に絡む事件が多く起こっていました。「カースト越しのラブレター事件」では、15歳の少年が自分よりも下位の階級の少女にラブレターを送ったところ、相手と同じ階級のメンバーに拉致され、髪を刈られ、市内を引きずり回された後、少年の母の命乞いも空しく、線路に投げ込まれ少年は死亡しました。また、違う階級同士の結婚が許されていないカーストでは、違う階級の人と駆け落ちをしたり恋をした場合、「名誉殺害」といって、自分の家庭の名誉を守るために、自分の親や親族によって殺されてしまいます。他にも、バス車内で起きた集団レイプ事件の犯人へのきちんとした裁きを求めるための運動がおこるなど、日本では考えられないような事件もあります。カースト制度では、親の仕事が自分の仕事となります。そのため、そのループから抜け出せません、しかしそれをまぬがれる職業が1つあります。それがIT関連の仕事。ITという仕事自体が新しい仕事のため、カースト内に属していないんです。そのため、身分に関係なくITの仕事に就くことができます。インドで急上昇しているのはそのためです。

そしてインドでは年間8万人もの子供が行方位不明になっているという事実です。犯罪データによると、ニューデリーでは毎日、14人の子どもの行方が分からなくなり、このうち少なくとも6人が人身売買の犠牲になっている。特にデリーやムンバイといったインドの大都市は犯罪組織に狙われやすく、警察によれば、こうした犯罪組織は薬物取引と似たような手口で子どもたちの人身売買を行っているといるそうです。経済が成長にするにつれ、格差は広がる一方です。国連やユニセフだけでは、正直手が届かない部分でもあります。少しでも彼らの力になれることを探すことが私たちの今出来ることだと思いました。
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