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眠れぬ夜の流れ星の海のレビュー・感想・評価

眠れぬ夜の流れ星(2015年製作の映画)
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私はずっと、一時間に一本電車がくればいいくらいの田舎で育ったから、初めて大阪の街に泊まった時には、夜が更けてもいつまでも、自転車も車も街のネオンも人の声も煩くて、驚いたものだった。いつまでこの人たちは、まるで昼間のように夜の中を歩くのだろう、ホテルの窓から行き交う車を眺め続けて、気づけば朝が来ていた。いつか、夜が作る闇だけでは足りず、人と人が手をつないで歩くその影さえも、光で照らしてしまう時代が来てしまうのだとしたら、瞳にうつるわずかな迷いや、触れた指に伝わる確かな好意や、あなたの言葉から滲み出す心の動きに、名前と形が与えられてしまうのだとしたら、そうしたらもう、私たちは、見つめあうことも耳を傾けることも、愛のために詩を書くことも、きっと忘れてしまうだろう
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