JIZE

イット・フォローズのJIZEのレビュー・感想・評価

イット・フォローズ(2014年製作の映画)
4.2
カンヌ国際映画祭で話題を集めた"性感染の脅威"を通じ正体不明な"それ"に憑依され死ぬ迄追い続けられる若者たちの80年代レトロホラー映画!!観終わり刹那的な面影が『ぼくのエリ 200歳の少女(2008年)』ぽい映画だなと(シミジミ)..終盤の"ある場面"では特に。要は切な系感動映画ですよ!!.とだけ。まず原題『It Follows』は"それが追って来る"を指し核心部の意味深な問題提起を示唆。またピンポイントで,個人的にあの廃墟的な80年代街造形のデトロイト感も廃退的なサスペンス性を増幅させ唸る。まあ(そういう静調な雰囲気込め)突飛なアイディア1発で若年層の性的事情に(揶揄や警鐘を通じ)鋭く踏み込んだ社会性が濃いホラー映画ではあったなと。要は罪の意識(贖罪)を備う者に対し"過剰な利己主義の傲慢性"or"罪悪感のジレンマ"を内存する"それ(潜在的な心理状況の闇)"が(形を変え)悪霊に擬態し(観客に)罪咎や不義など不道徳性への警告を訴え掛けるものなのではと(解釈上)感じ取れた。まあ最終的にはそこまで咎めた攻撃性を比喩する意図ではないかもしれないけど,要するに邪悪な道を選びその影響で被った"罪の意識(心の傷)"自体は永年拭い去る事は不可能..でも当事者に対し「道を絶たず前向きに懸命に生きていこうよ!」「底(絶望の淵)から抜け出そうよ!」という(映画の最終的な描写を考慮し)ポジティブ精神を謳う道徳的な部分は個人的に感動的な儚い面影を残し大絶賛!!でしたね。そういう映画なんですよ。以下ネタばれに少し踏みので少なくともこの時点で映画に興味を抱いた方は劇場で新種な恐怖映画を是非お勧めです!!

まず事前に本作。観る前の告知でも制作費がわずか$200万ドル!!とか人気映画批評サイト「Rotten Tomatoes」で高評価獲得!!,『グリーン・インフェルノ(2015年)』を撮影したあのイーライロス監督も絶賛!!など期待値は自ずと加点に次ぐ加点で気を高ぶらせたんだが..まあ詳細は下記で。あと劇中で有名な文学作品が2箇所,引用されその一節が登場するんですが,1つ目はドフトエフスキーの小説「白痴」で戦慄的な"肉体と魂"を言及する場面があり題材の性的な強迫観念とも対を成すメタな演出だと。2つ目は詩人T・S・エリオット「J・アルフレッド・プルーフロックの恋歌」みたいですね。そういう詩的な韻を踏ふ映画です。尚私自身も劇場でホラー映画自体を鑑賞する事は久々で意気込み的にも興奮気味で監視。

勿体振ってても仕方ないので結論部を先に告白すれば,この映画..散々上で持ち上げたのですが(敵対象の設定or最終的な方向性込め)試作段階な実験性漂う怪作!!だと私は思えた。設定が中途半端で題材が地獄から抜け出そうよ!,と謳う割に映画全体の雰囲気が抜け切らない違和感は漂う..要は話の切り口(構造)が実は事態の進展前と進展後でほぼ進捗を魅せず平行線を保つ感じも..まあ致命的な問題も主に分類し2箇所。1箇所目は"それ(幽霊)"側の起源(背景)を割愛した不親切な構造or既存的な定義(制約or能力)の不完全性。2箇所目は若者側の危機意識のなさ..要は注意喚起の張り方自体に疑問を呈し難がある映画だなと。細部の悪点に目をつぶってもやはり"それ(幽霊)"側の基本的な必要最低限な詳細をボカした状態で進む構図には抵抗感を抱かざる得なかった。だから致命的な敗因は敵側の過剰な掘り下げ不足でしたね。

概要。捕まった者に死が訪れる謎の存在"それ"に付け狙われた女性の恐怖を描く低予算ホラー映画。監督は長編第2作目のデヴィッド・ロバート・ミッチェル。主演には『ザ・ゲスト』のマイカ・モンロー等が名を連ねる。また本作は2014年カンヌ国際映画祭で喝采を浴び名匠クエンティン・タランティーノから称賛を受け全米で大ヒットの注目を集めました。

マイカ・モンローが身震いしパラノイア的な窮地に陥るきょどり演技はそりゃ最高でしたよ..シナリオ自体も単純過ぎるほど行動規則が目で追えた。要は"伝染性がある奇病"を患った少女が"謎の存在(悪霊)"により狙われる原因を突き止めながらも己の人生観と向き合い仲間と共に解決の糸口を探し出す,というジュブナイル要素込みで永年続く恐怖が因果を結び負が連鎖する不条理なホラー物,だと。また後半部で反撃の狼煙を上げる若者側のロードムービー要素も個人的に惹かれた。あと"それ"側の視点と"感染側"の視点しか認知不能な世界観の示し方(演出)でも空間の虚と実で仮想空間を隔て創り出す内側と外側で特殊性を出した演出は見事に思えた。また一応非感染者たちも"それ"側に物理的な危害を加える事は可能なんだけど同時に敵も同様に反撃でき,この辺の実は空間が完璧に乖離してなく視覚的にだけ漠然と切り離され虚と実が曖昧な切り取られ方で接続されてる設定も中盤の海辺場面や終盤のプールサイド場面込みで唸る。敵が非感染者に攻撃されない限り,決して自動的に反撃しない受身な設定も若干面白味に欠けた。まあこれ以上言及すればネタばれ的にヤバいので留めます。

恐怖描写の演出。
まず開幕早々で"前日譚"を差し込んだ事で標的にされる絶望感を後の中盤以降に重苦しくグルーヴさせ構成的に的確だと。要は少女がいきなり家を出て観客側(カメラ目線)を睨みブツブツ何か小言を発している。そして場面は飛び突如海辺であの顛末を魅せる事で主役が最悪な顛末を迎えた際に体感する恐怖度が倍増。実に秀逸だと。"それ"のキャラ造形でも当然なんだが無表情で無機質..ただただ徒歩でこちら側を1点睨み歩幅を緩めたり早める事なく"一定の速度"で標的目掛け襲い来る演出。コレは結構私自身もどぎつい恐怖感を抱きました。例えば中盤,主役ジェイがふと学校の授業中に顔を見上げれば老婆がこちらを睨みトボトボ前進しジェイが異変に気付き教室を飛び出す認知可能な2人だけの世界観で揺れ動く心情の魅せ方が適切だった。敵側が瞬時に媒体を変え別人に形態を変える設定も説明不足ではあった。あとゾンビ的な脳天を撃ち抜いても蘇生し迫り来る不死身設定も怖すぎましたね。あと予告でも垣間見る終盤プールサイドで(人物の詳細は伏せますが)血が充満する解釈の読み取り方は何を示唆したものなのか唯一理解できなかった。。

総括。
まあ事前でも散々謳われるよう"新感覚なホラー映画!!"と確かにそこ1本を深く追求したまんまな新種で実験的とも取れる作品なのかと。やはり改め敵側の"標的を追い続ける"反復したループ構造に歯止めをかける決定的な何かがこの映画は改造する余地があり過不足すぎたなと。終盤で友人が老婆を意味深な眼差しで眺め何か考えを浮かばす性的な示唆も与える場面ありますが正直なところ物足りず肝心な問題提起を放棄し幕を閉じる感がね。映画的にも実に頂けないなと。若者側の危機意識の欠如も現代に照らし合わせた揶揄だと取れますが,実際この映画で登場する全若者たちは極度な死の淵に追いやられている筈が全員危機意識なさ過ぎだろ!と思いましたね笑。ジェイの友人側にしろあれほど本幕と密接に絡ませるならキャラ造形を厳格に練り上げるべきだったなと。元々ジェイに奇病を移した当事者ジェフの存在も客観的にただ傍観してるのみでアレでは役不足感が拭い切れない。無責任な男だ。最終的にもこの映画はあくまで新感覚な恐怖性の体感orジュブナイル的な仲間同士が一致団結し敵を迎え撃つ友情秘話にドップリ浸かりたい方のみで物語の期待を抑え観る事がお勧めです!!