ケンヤム

イット・フォローズのケンヤムのレビュー・感想・評価

イット・フォローズ(2014年製作の映画)
4.8
昔子供の頃「どうやったら子どもは生まれるの?」と、大人を困らせるような質問をすることがよくあった。
母は「ペリカンが届けに来てくれるのよ」といつもはぐらかしたし、私はそのデタラメを信じたふりをした。
「なにかを隠されている」というような気がして、とても怖かった。

さて、今や私も24歳!
子どもはセックスをすると生まれるのだということを知っている!
それなのに、この不安感はなんだ。
それは、人間の根源的な苦悩なのだと思う。
私はどこからやってきたの?また、どこへ行くの?
私たちは、未だになぜ生まれてくるのか知らないし、なぜ老いて死んでいくのか知らない。

この映画で「それ」はひたと地面を踏みしめまっすぐ歩いてやってくる。
「それ」は生なのかそれとも死なのか。

私たちはこの映画の主人公のように、まっすぐ指をさして「それ」を見つめ続けなければならない。
いくら得体の知れないものだろうと、目を背けてはならない。
「指をさし続けろ」

「それ」は死ぬまで私たちにつきまとうだろうが、うろたえてはいけない。
「寝ても覚めても」の映画評で蓮實重彦は「ただただ男女が並び立つ最後のカットが感動的だ」と述べていたが、この映画のラストただただ男女は手を繋いで寂れた住宅街を歩く。その後ろには「それ」がまっすぐつけている。

セックスと滅びの気配。
滅びの気配が、私たちを種の保存へと駆り立てる。
そのことの悩ましさと怖さ。
そして美しさ。
ケンヤム

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