Habby中野

イット・フォローズのHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

イット・フォローズ(2014年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

呪い、運命、怨恨、伝統、遺伝、習慣、国籍、性別、記憶、容姿、生活、死。自分の背後をついてくる、振り切っても振り切れないものは数え切れないほどある。どんなに走っても、いつか追いついてくる。"そいつ"はそれらのどれでもないかもしれないし、どれかかもしれない。「見ること」を掬い上げた「シルバーレイク」のアイディアと近い時期に作られた作品と考えれば、例えば、視線。「見られている」限り、誰かの視線はついてくる。
「性行為」で移る"そいつ"は、通常互いに見つめ合う、生命の象徴、或いは「同意」の象徴である行為をそれを持つ/持たないによって見る/見られるの関係に変異させる。見られた者は、その対象という性質から逃れるために、他の対象を見つけ、「見る」側に回らなければならない。(だが、その関係が不完全で、自らが「見る」ことを意識しなければ、完全に移行はしない。)
視線は、意識しない者や意識のないうちは何もせず、しかし無意識でも触れた者を傷つけたりする。
"そいつ"が命を奪う姿はまさに一方的な性行為の権化、視姦の具体化であり末恐ろしかった。そうして見る対象が奪われると、再び自らが対象となる。見る側は見られる側でもあり得る。究極は、通常の見つめ合う行為までをもその意味を変えてしまい、それはついに手を繋ぐ二人を後ろから見る我々の視線に現前化し終わる。しかし、そいつが自分だけだとは限らない。
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