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アネミック・シネマのnknskokiのレビュー・感想・評価

アネミック・シネマ(1926年製作の映画)
5.0
デュシャンは「カメラ!」と叫んだ
カメラマンは「回ってます」とそれに応える 

デュシャンは私たち映画鑑賞者に回転するプロペラを見つめるよう求めたかのようで

ここにはデュシャンの作品「自転車の車輪」が暗示されている

私たちは回転する円盤に焦点を合わせるが、その表面には色々な螺旋形が印刷されている

語列が中心に向かって貝殻のように内巻きに旋回し、それぞれ異なる中心を持つよう配置されている

回転するとその螺旋形は丸い形が観測者に向かって外側に大きくなるという魔法を作り出す

それは手前に突き出すわずかに震える突起物(性的な立体?)であり、外縁に達すると突然内側に向かい始め、逆向きに潜り込み、凹んで、窪んで、袋状になる

螺旋型は膨れ上がったり引っ込んだり反復することで前方への進出を試み、そして運動の連続性を切り分けされたリズムへと変容させる

この脈打つ動きが起こるのは全く動かない固定されたフレームの内部においてなのだが、そのフレームのためにこの「アネミック・シネマ」は映画と絵画の間のどこかに位置するある種の立体的物体となっている 

そもそも芸術とは何か?
おそらくこれについてしっかり自分の言葉で説明できる人は少ない

デュシャンは「芸術とは概念そのものである」と言っている
芸術は思考を表現する手段、それどころか思考そのものが芸術に他ならない

「なぜ美しくなければいけないのか?」
「なぜ画家のサインが入ると、その絵の価値が飛躍的に高まってしまうのか?」
「絵画とは目(網膜)を満足させるためのものでなくてはいけないのか?」

絵画が網膜的になったというのは、「目を楽しませるためのキレイな飾り物としての絵画」になってしまったという意味

芸術の価値は芸術家の優れた感覚や技術ではなく、概念に基づいて選ぶことにある、とデュシャンは主張した

「芸術に”答え”など存在しない、なぜなら”問い”自体存在しないのだから」
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