垂直落下式サミング

マネー・ショート 華麗なる大逆転の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.9
2008年の世界金融危機とは何だったのか?語られるべくして語られなかった実話を題材にした映画。疑似ドキュメンタリーテイストのメタコメディで、アメリカ住宅市場の破綻にいち早く気づいた四組の男たちを描く群像劇だ。
序盤から登場人物たちが専門用語の応酬で怒鳴り合い、様々な皮肉とユーモアを織り込んだザッピング映像に切り替わったかと思えば、登場人物が急にカメラ目線で観客に向けて話しかけてきたりする変な映画で、終止物語が動きを止めず全編が繋がれている。マクロだのミクロだのといった小難しい専門知識に詳しくなくても理解しやすいように、 ジェンガやブラックジャックや料理を使って経済の仕組みを可視化してくれるのも面白い。しかし、一見親切な説明と難しい専門用語を織り混ぜて顧客をなんとなく納得させて金を出させるのはウォール街の常套手段だ。この映画は「これを一本観ただけで分かったような気になってると、また同じ事を繰り返しますよ?」と我々に警告しつつ現状を嘆いている。題材にして実に的確なアプローチだと思う。こういう映画を観るといつもインテリぶって何となくわかった気になっちゃう私は、絶対投資なんか手を出さない方がいいんだろう。
主人公たちが賭けに勝つ場面でもその裏では大勢が財産を失っていことが仄めかされ、爽快な勝利とは距離がおかれた大人の映画だった。なので、四人の男達が颯爽と並び立つポスターアートはさすがに詐偽だと思う。