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マネー・ショート 華麗なる大逆転のbluemomday0105のレビュー・感想・評価

3.7
サブプライムローンの破綻により、アメリカのみならずグローバル経済を崩壊させたリーマンショック。世界経済に大打撃を与え、多くの人々が財産や職を失った中、いち早くバブル崩壊の予兆に気付き莫大な利益を得た金融街のアウトローたちがいた。彼らはいかにして、ウォール街を出し抜いたのか?

実際に住宅ローン証券を空売り(Short Selling)した資産運用家、ヘッジファンドのマネージャー、銀行の取引仲介人、トレーダー、投資家たちをモデルにした実話に基づくストーリー。

初めて見たときは金融用語が全く分からなくて、ただ「自分の仮説を証明するため、粘って粘ったんやな」って印象だったけど、当時より少し知識がついたからその分興味深い。始まりの「THE BIG SHORT」で「あっショートってそういう…!」と気付いてハッとしました。邦題警察じゃないけどこれはあかん…焦げ付きと空売りじゃ全く違う。あと冒頭のチャート、ちょっと投資かじってる人間にはかなり怖い真っ逆さまぶり。FXやってる人とかかなり面白く見えるかと。
逆に金融知識ないと厳しいな…これがアカデミー賞各賞候補に選ばれるアメリカと日本では、金融知識のレベルが違うのか。

いきなりお風呂に入った金髪美人が話しかけてきたりとか、第四の壁を破りまくる。マーゴット・ロビー、「I, Tonya」といい、こういう役多いなw 突然のセレーナ・ゴメスもびっくりするけど。
シリアスな題材の割にギミック多めの構成だったり、ブラピ演じる伝説のトレーダーが若い投資家に協力するため都会に出てきた場面でゴリラズかかったり、ポップな演出が引っ掛かったけど、あまり重くしないように配慮されてるのだろうか。主人公格のクリスチャン・ベール演じるヘッジファンド経営者マイケル・バーリのメタラー設定は事実?

優良債とジャンク債を組み合わせた証券CDOを狙い通り購入し、一攫千金のチャンスに盛り上がる若者達に「君たちは経済が破綻することに賭けたんだ。はしゃぐな」と釘を差す、伝説のトレーダーことベン。
ゼロサムゲームを是とする、金融モラルの低下したウォール街に嫌気がさし都会を離れた彼が、「儲けた人間の裏で泣く人間がいる」マネーゲームを断罪する。
また、銀行や証券会社の腐敗に辟易し、出し抜くことを決めたヘッジファンドのマネージャー、マーク。彼の目論見通りバブルがはじけ、利確の機会を得るも「ここで我々が利益を得ることで、財産を失う人がいる」とぎりぎりまで躊躇する。

誰かが儲かった分、誰かが損失を被る。
何十億ドルもの利益を得た金融街のアウトローの裏で、なけなしの財産で購入した家も職も失った何万もの人々。おそらく日本でも資産を溶かし自殺した人も少なくなかっただろう。
勝ったはずなのに、全くすっきりしないもやもやした結末は、ラストの後記で胸糞悪さをもって確定される。結局泣くのは、汗水たらして働く普通の人々なのだ。

ショーン・ベイカー監督「フロリダ・プロジェクト」の世界と、地続きと見るべき作品。家もなくモーテルで暮らす彼らは、自業自得なんかじゃない。やるせない結末の裏に、アダム・マッケイ監督の義憤が伝わる。
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