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666号室の教授のレビュー・感想・評価

666号室(1982年製作の映画)
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「映画とは、失われつつある言語で、死にかけている芸術か?」
と様々な映画監督たちに投げかけるヴィム・ヴェンダース。

議論ではなく。1982年のカンヌ国際映画祭開催期間中、ホテル・マルティネス666号室でのインタビュー。

様々な国々の、様々な事情や境遇に監督たちの、それぞれに語られる映画の未来。
設問も悲観的だが、その悲観に沿って「かつての映画」について話を広げたり、テレビやビデオと共存していくしかないと述べてみたり。

とはいえ、当然ながら現代は「インターネット」により、そのテレビすら凋落をしている状況。
「映画の未来」なんていう「失われつつある」という悲哀のロマンチシズムもない。
当たり前だが、本作に映る監督たちは預言者ではないので、この状況を知るわけもなく。
彼らの憂いは、むしろまだ楽観的に見える。

感覚的にでも「映画とは何か」がまだ機能していた時代よりも現代の方が、映画は危機に瀕している。
その他のあらゆる表現形態とは違う「映画」というアートフォームが、テレビドラマ、ミュージック・ビデオなどの映像表現との差異が、もはや観客の側も意識しない時代になっている。
映画館がなくなるよりも、小規模作品はおろか大作ですら映画ではなくなる。

特に大きな感想がある作品ではないが、映画という表現は長い時間「死ぬ死ぬ詐欺」を繰り返しながら、なんとか延命はしてきた一方で、やはり確実に徐々には死に向かっているのだと感じる。
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