Inagaquilala

あしたのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

あした(1995年製作の映画)
4.1
「新作『花筐/HANAGATAMI』完成記念! ワンダーランドの映画作家 大林宣彦映画祭2017」で観賞。出演者に知人がいたため、確か現地でのロケを見学に、尾道の対岸にある向島まで出かけた記憶があるのだが、完成した作品を観た記憶がまったくない(でも観ているはず)。ということで、今回、ほとんど初めてのような気分で観賞したのだが、この作品、実によくできている。大林作品の中でも5本の指には入る出来であることは間違いない。

<午前零時に待つ>という死者からのメッセージを受け取った家族や恋人たちが、呼子浜という場所の船着き場に続々と集まり、奇跡の一夜を過ごす群像劇だが、そこで繰り広げられる人間模様が実によく編み込まれており、和製「グランドホテル」としての完成度は高い。シンプルに言えば、沈没船の中から現れる「幽霊たち」との交流を描いたものなのだが、大林宣彦にかかると、それさえもメルヘンの中に投げ込まれ、時にコミカルに時にしんみりとした物語が繰り広げられる。

もちろん大林監督の作品らしく、セットや映像の隅々にまで綿密な配慮が行き届いており、このあり得ない話を、かなりリアリスティックな演出で、現実に起こりうるような物語として見せている。「ふたり」から始まる新・尾道三部作の第2弾だが、舞台は大半が尾道の対岸に位置する向島につくられた呼子浜のセット。それでも続々のこの浜を目指して、尾道から集まってくる人々の描写はなかなか興味深い場面だ。

群像劇であるため、実にたくさんの役者が登場するが、旅する女子大生役の高橋かおり、水泳部員役の椎名ルミ、女子高生役の宝生舞など、若い女優たちが生き生きと演技を披露しているのが素晴らしい。メジャーデビュー作である「HOUSE ハウス」(1977年)の頃から、やはり若い女優さんを魅力的に使うのが大林監督は上手いなと、あらためて感心した。
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