MasaichiYaguchi

最愛の子のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

最愛の子(2014年製作の映画)
4.0
今ではアメリカと比肩するぐらい超大国となった中国。
その発展の輝きが強ければ強い程、その闇は濃さを増す。
年間20万人の子供が行方不明になるという中国で実際に起きた誘拐事件を基に映画化された本作では、その光と闇が親と子の情愛や絆を通して浮き彫りにされていく。
中国での子供の誘拐は日本のような身代金目当てではなく、人身売買が主で、あとは単純に子供ほしさによるもののように見せる。
だから、本作で幼い一人息子を誘拐されたティエン・ウェンジュンは、富裕層でも有名人でもなく、住宅が密集した路地で商いをする一介の市民。
妻にも去られ、唯一の心の拠り所である息子ポンポンがある日忽然と消えた彼の喪失感と自戒の念は如何ばかりか。
映画の中盤で彼と同じような境遇の人々が出て来るが、私も親の一人として彼らの告白を聞いていると、その遣る瀬無い悲しみや苦しみ、そして怒りが伝わって来る。
主人公は息子の行方を、切れてしまった親子の糸を必死に手繰り寄せようとするように粘り強く捜し続ける。
そして遂にその糸の端を掴んでいく。
本作品の斬新なところは子供を軸にして被害者側からだけでなく、加害者側からも描いている点。
加害者が何故子供を欲したのか、その訳も描かれるのだが、如何なる理由があろうとも、それは許されることではない。
この映画の背景として中国の少子化政策が深い影を落としている。
この政策によって一家における子供は尚のこと“宝”のような存在になっているのだと思う。
生みの親としての子に対する愛、育ての親としての子に対する愛は、血が繋がっていようといまいと、その強さは変わらない。
あるポイントから被害者と加害者の立場が逆転する本作では、そのことが如実に描かれる。
ラストでの静かだが衝撃的な事実と、映画で紹介される何処にでもいそうな実際の事件の当事者たちを見ると、この中国での社会問題の根深さを一層痛感する。