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神の一手のmaverickのレビュー・感想・評価

神の一手(2014年製作の映画)
4.1
2014年の韓国映画。人気と実力を兼ねたチョン・ウソン主演のアクション映画で、観客動員数356万人の大ヒットを記録した。

日本の将棋と同様に、韓国で人気の囲碁をテーマにした物語。だがそれは表舞台の棋士の世界ではなく、イカサマが横行する危険な賭け碁に興じる人々を描いた物語である。先を読む頭脳戦によるスリリングな駆け引き。そうした碁の魅力をストーリーに上手く絡めてある。そしてそれをベースにしたぶっ飛んだ肉弾戦バトルこそが本作の作品性。碁の強さでうならせておいて、最後はとりあえずぶっ飛ばす。そこが爽快だ。


プロの囲碁棋士である主人公のテソク。兄に泣きつかれて賭け碁の手伝いをする羽目になるのだが、それがバレて兄は拷問の末に殺され、自身も罪を着せられ投獄される。全てを失った彼だが、人生に絶望するのではなく、激しい怒りから兄を殺した相手への復讐を計画する。
最初の方では見るからに優男なテソクだが、そこから鍛えてムキムキに変身を遂げる。チョン・ウソンの鍛え上げた肉体美は一見の価値あり。テソクは喧嘩もめちゃくちゃ強くなっており、元々あった碁の強さと合わせて最強の男に。この最強主人公が悪に裁きを下してゆく過程が爽快なのだが、それでも簡単にはいかないと思わせる悪人側のヤバさも抜きんでている。

イ・ボムスが演じるボスがめちゃめちゃ怖い。賭け碁を仕掛けて相手から金を巻き上げる手法で裏の世界に君臨している。相手への拷問の仕方が残忍で、その見せ方でこの男の恐ろしさを表現している。見た目はちょっと悪そうな『相棒』の右京さんなのに狂気さがヤバい。どんな強い碁の相手にも勝てるようにチームを組んでおり、そこの抜け目のなさも彼の狡猾さを物語っている。これに対抗するために主人公も協力者を集ってチームを結成する。そのチームバトルも面白い要素だった。

盲目の凄腕棋士を演じるベテラン俳優のアン・ソンギ。本作のヒロインで敵の片腕を演じる女優のイ・シヨン。子供でありながら天性の碁の才能を持つ天才少女を演じるのは、『オクジャ/okja』の天才子役アン・ソヒョン。漫画のようなぶっ飛んだ世界観でありながら、そこにリアリティを感じさせるのは演者の高い技量によるものが大きい。「そんな碁の打ち方あるかい」と突っ込みどころも満載なのに、それを黙らせて惚れ惚れさせるパワーがある。脇役からチョイ役まで印象に残るキャラクターと出演者でとても見応えがあった。


漫画のような描写なので原作があるのかと思ったが、そうでないのがまた驚きだった。オリジナリティに溢れた意欲作である。本作のスピンオフに『鬼手』という作品があり、物語はそこにも引き継がれているようだ。こちらも是非観たい。
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