ギズモX

ジーザス・クライスト・スーパースターのギズモXのレビュー・感想・評価

4.8
【誤解するなよ】

今週はイースターが間近に迫る受難週だ。
ということで、今回はイエスキリストの最後の7日間をユダの視点から脱宗教的に描いたこのミュージカル映画を。

劇団四季でも公演された大人気ミュージカル作品『ジーザスクライストスーパースター』を《本物のイスラエルの遺跡を舞台に70年代のヒッピー達が演じていく》という、現代と過去が混じり合った方式が取られた異色作。
型破りな世界観や演出に目を惹かれます。

衣装は2000年前の服装をヒッピー風にした格好でローマ兵はMP40を装備してるし、果てにはバスや現代式の戦車や戦闘機まで劇中に登場してくる。
イエスキリストを題材した映画に厩戸の皇子こと聖徳太子が刷られてある旧紙幣が映ったのはこれくらいなもんだろう。

この映画はイエスを裏切ったユダを主人公にしたことで当時のキリスト教界隈から大バッシングを受けたんだけど、実はキリストを批判した作品にはなっていない。
むしろこの映画の役者達はみんな登場人物に感情移入しすぎで、(もしも自分がそこにいたら?)と、イエスやユダ達の葛藤を今になぞらえながら真剣に演じており、全てが神の手中にあるのならどうしてこうなるのかという思いを神の前に隠すことなく切実にさらけ出している。

二人だけではなくマグダラのマリアや祭司達やピラト、ヘロデにまでズームされているので、もしかしたらキリストを題材にした映画で一番様々な登場人物達の思いを表現できてる作品かもしれない。

勿論、僕はこれが忠実だったとは全く思っていない。
でも、クライマックスの『super star』で爽快なギターのイントロにそって自殺したユダがクレーンで下りてくる姿には本当に励まされる。
スコセッシの『沈黙』が好きな人はこの映画も是非観てほしいです。

ラストの羊飼いが羊の群れを連れて十字架を横切ってくショットが神秘的かつ幻想的。
これが偶然撮られたというのだから驚きだ。
神様は何を思っていたんだろう。

僕がキリストを題材にした作品で一番好きなのは『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を描いた安彦良和氏の『イエス』

アムロそっくりのイエスの名もなき弟子、ヨシュアを主人公にしたこの漫画は、尊厳のあるイエスの姿を脱宗教的な目線から読み解いており、この『ジーザスクライストスーパースター』と同じものを感じさせてくれます。
また、その作品ではユダは実は○○○であり、人それぞれで描写が違うのもとても面白いです。

http://www.kirishin.com/2021/06/09/49290/
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