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たかが世界の終わりのrpmu90377のレビュー・感想・評価

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
3.6
ゲイの劇作家ルイが12年ぶりに実家に帰る。彼を迎えたのは、母と兄と妹、それに兄嫁の4人。突然の帰宅に戸惑いながらも温かく迎える家族の中で、兄だけが冷たい態度をとる。ルイは帰宅の目的をいつ言い出そうかと迷っていた。病に侵されて長くは生きられないことを伝えるためだと。

ルイが聞き手になって4人がそれぞれの思いを打ち明ける形式をとって物語は進行する。日ごろからたまっているうっぷんが爆発し激しいいがみ合いに発展する。家族の争いごとはドラマのネタとしてよく取り上げられるが、この作品は「渡る世間は鬼ばかり」ほど面白くない。争いごとの原因を作っている兄の個性が強すぎてその発言は理解に苦しむ点が多い。ドランの狙いは一般受けするホームドラマを作ることではないのであろうが、特殊な設定ならそれなりにしっかりと説明しないと、真の狙いが伝わらず、ひとりよがりのいわゆる「芸術的作品」に終わってしまう。

終盤、兄がルイを一刻も早く追い返そうと態度を一変させるくだりは特に理解しがたい。原因は何なのか。ルイが12年間の無沙汰を詫び今後は家族と向き合って生きていくことを口にしたことで自らの存在価値がさらに低下することに焦りを感じたからなのか。説明が不足していてもどかしい。

ルイ役のギャスパー・ウリエルが、聞き手役に徹して相手の問いかけに二言三言返して微笑むという演技を繰り返し見せるが、家族の喧騒とは対照的な物静かな雰囲気と美しい顔のアップは全編を通じて印象に残る。
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