脚本凄い!!と思ったら、
舞台劇の映画化だったのですね。
キャストが何とも豪華なこと!!
ルイ役のキャスパーウリエルはお初の役者さんでした。
冒頭の飛行機の中でルイの心の中が言葉となって、語られています。
12年間家を離れ、そして、"自分の死を伝える為に"家に戻る。
12年間立ち去った理由もあれば、向かい合う(家族と再会する)理由もある。
と。
ママのマルティーヌ(ナタリーバイ)が、
12年ぶりに帰って来るルイの為に料理を作り、
ルイが空港から、タクシーで家まで向かう時の車窓の景色から、
差し込まれる鮮やかなパプリカや赤カブの色。
実にドランらしい画の作り。
兄のアントワーヌ(ヴァンサンカッセル)の暴言や悪態から
兄のルイの帰りを楽しみにしていた末っ子のシュザンヌ(レアセドゥ)がヒステリーを起こしたり…
と、不穏な空気になり、ママは嘆き、ルイは家族に打ち明けるキッカケを失ってゆく。
まるで兄のアントワーヌは弟のルイに恨みを持っているかのような振る舞い。
ゴチャゴチャとする中で、静かにルイを見守っていったのはアントワーヌの妻であるカトリーヌ(マリオンコティヤール)
カトリーヌはルイと初対面だったのもあるけれど、唯一の肉親では無いからでしょうね。
何かとルイに悪態をつく兄のアントワーヌだけれど、
ルイは思い出す。
幼い頃に年の離れた兄に肩車してもらった事。
草原の中で。
ルイは簡単な文章の絵葉書は出していたけれど、電話等の連絡は一切絶っていたと思われます。
何故、ルイが"この場所"から12年間も遠ざかっていったのか…。
カトリーヌの前で、
ルイの青い青い瞳に涙が溜まっていくシーンが、
ルイの瞳の美しさと、悲しみを堪えて、何とか涙を堪えてるシーンが一番印象に残りました。
ルイ(キャスパーウリエル)の瞳が美しすぎて。
果たして、ルイは家族に打ち明ける事が出来たのでしょうか…。
カトリーヌは気づいていたのか…。
アントワーヌは弟のルイを無理矢理、
「帰ると言ってる」と家から追い出そうとし、
やがて、弟のルイを殴ろうとし、
でも、アントワーヌは泣いている。
アントワーヌは"分かって"いたのか…。
ラストのシーンがもうね…"含み"が凄くて、唸るものがありました。
会話劇
とても、イライラしてたまらなかった!!
なのに、観終わってからの余韻が凄いです。
ズシンと来ました。
午後1時から午後4時まで、たったの3時間を描いただけのストーリー。
私の苦手なワンシチュエーションでは無かったですね。
例えば、リビングだけのシーンとかでは無く、家の庭や物置や、
ルイとアントワーヌが車で出掛けるシーンや、
そして、ルイの思い出の中の映像だったり。
映画の尺は短いけれど、ズッシリと重たく乗し掛かって行く作品でした。
自分が
この世に居ようとも、居なくても、それでも、"日常"は続いていくもの"
と、ルイは悟るのです。
英題は
"It's Only The End Of World"
この"Only"を
「ただ」
では無く
「たかが」
と翻訳したのが秀逸過ぎます。
ドランの出て居ないドランの作品。
ドラン作品は甲乙付けがたいですが、
この作品は、私の中で、かなり上位に来る作品でした。
PS ルイ役のギャスパーウリエルが今年の1月にスキー事故で亡くなっていたとは…知りませんでした😢
ご冥福をお祈りします🙏