ドランの映画は基本的に好きなんだけど、この映画はちょっといただけなかった。
なんでこの映画が気に入らなかったか考えてみたら、やっぱり登場人物がほとんど基地外じみてて騒がしく、同じ家族物の作品である(舞台が原作ではあるけど)夜への長い旅路や八月の家族たちと比べて感情移入し難いものがあったのが最大の要因かと思う。
あとほとんど登場人物の顔しか映さないカメラワークも単調で、これまでのドラン作品と比べても映像の面白味が少なかったのもつまらなかった。演劇的な映画にしたくなかったのかもしれないけど、だからこそヴァージニア・ウルフなんか怖くないでマイク・ニコルズやハスケル・ウェクスラーがやったように挑戦的な映像にしてほしかった。
これだけならただ大した映画じゃなかったな程度で済んだんだけど、こんな粗しかないものにカンヌで賞が与えられたという事実が腹立たしく(これはドランのせいではないとはいえ)、ジョージ・ミラーらの目は本当に節穴だなと一層強く感じた。