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たかが世界の終わりのxiのレビュー・感想・評価

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
4.0

『居心地のいい不幸よりも幸福を選べ』

自分の死を告げるため12年ぶりに実家へ帰ってきた主人公。
大きな愛で迎える母親。
記憶にない兄を自分の希望だと確信していた妹。
いつもと違う日に戸惑いを感じる兄。
健気に、だけどズカズカと踏み込む兄の嫁。

久しぶりに帰ってきた息子がきっと何かを持ち帰ってきていることは誰もが気付いていながら今日を壊してしまうかもしれない主人公になかなか耳を傾けることのできない家族。
今日は特別な日だと口を開く前に語りかけていく。
心にひとつ、またひとつと扉を閉められていくように出かかる言葉をのみこんでいく。
溝が埋まったフリをする。
そもそも溝なんてなかったかのように仲のいい家族だと信じている母親。
それが自分にとって幸せなことだと分かっているから。
昔話を昨日のことのように話して行く。

ひとつひとつの会話や口論はとてもリアルで息苦しくて、これが家族だといわんばかりにグザヴィエドランは訴えかけてくる。
幸せなんて生き辛さの中にしか存在しない。目を背けてしまうのは次があるはずだと思ってしまっているから。
何度も何度も観れば私はこの中の誰かに感情移入してしまうかもしれないし、一生避けてしまいたい人になるかもしれない。
誰の目線になってみるかによって感想は大きく変わるだろうし第三者としてみて自分はただただやるせない気持ちになりました。
グザヴィエドランの撮る映画はいつだって愛で溢れています。
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